親権者について知つておこう

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「親権」とはどんな権利なのか

親権は、子どもの世話をしたりしつけや教育をする「身上監護権」と、子どもの財産を管理したり、子どもに代わって法的な行為(契約など)を行なう「財産管理権」とにわけられます。

この親権をもつ人を親権者といいます。離婚などせず、ふつうに両親と子どもで暮らす場合には、夫婦の両方が親権者になります。

第2章でも述べましたが、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合には、親権者をどちらかに決めなければいけません。

親権は、あくまで子どものための制度であり、親の一時的な感情で決めるべきことではありません。

夫婦の両方が、お互いに親権者になりたい(あるいはなりたくない)と言い張って、どちらが親権者になるか決められない場合は、家庭裁判所に親権者の調停申立てをして、調停あるいは審判で親権者を決めます。

なんら問題もなく、どちらが親権者になるのかが決まっているのならば、離婚届を提出する際に、「親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名」を記入しますが、一度離婚届に記載された親権者は、簡単に変更できるものではありません。

提出後に変更する場合は家庭裁判所の許可が必要になりますから、よく考えて決めておくべきでしょう。

また、子どもが生まれる前に離婚した場合は、母親が親権者になるのが一般的ですが、事情によっては父親が親権者になることもあります。認知されているが父母が結婚していない婚外子の場合も同様です。

親権者が決まらなければ、調停または審判へ

親権者をどちらにするかということだけが決まらないために、協議離婚が成立しない場合には、親権を決めるために調停または審判を申し立てることになります。

このような場合、「まずは調停を申し立てて、調停でも決まらなかったら審判へ」という段取りでもかまいませんし、「調停をせずにいきなり審判」というやり方でもかまいません。

しかし、もし、どちらかを親権者とする審判が下され、それを不服とする場合は、2週間以内に異議を申し立てて、家庭裁判所に離婚訴訟を起こすということになります。

親権は「子どもの利益と子どもの福祉」を中心に決められる

「子どもは母親がひきとって育てるのがいちばん」と一般的にはいわれますが、親権者をどちらにすべきかを決定する審判では、家庭裁判所の調査官が、子どもをめぐる家庭環境や当事者である父母についての調査を行ないます。

そしてどちらが親権者としてふさわしいかを検討するのです。

この場合、経済的に裕福なほうが有利であるとか、仕事の職種によっては不利になるということはいちがいにはいえません。

たとえば、「ホステスをしている母親は親権者としてふさわしくない」わけではかならずしもありませんし、「資産をたくさんもっている父親が親権者になったほうが子どもは幸せになれる」とはかぎらないわけです。

親権はあくまで、子どもを保護することが目的の制度ですから、子どもの利益や子どもの福祉を十分に考慮した上で、親権者が決められます。

離婚後に親権者を変えることもできる

たとえば、「子どもは父親がひきとって育てることになったが、父親が再婚することになったとたん、子どもがほったらかしの状態にされている」というようなケースでは、親権者を変えることも可能です。

親権者を変更するには、家庭裁判所で変更の調停あるいは審判の申立ての手続きをします。

この親権者変更の申立ては、父母以外の子どもの親族(たとえば祖父母など)からでも行なうことができます。

そして、申立てを受けた家庭裁判所は、申し立てた側と申し立てられた側の双方についであらためて調査を行ない、養育における経済力や熱意などを検討した上で、「子どもの利益のために親権者を変更する必要があるかどうか」を判断します。

その結果、変更の必要ありと認められた場合には、親権者が変更されます。

この親権者の変更に際しては、子ども本人の意思も十分考慮されます。

とくに子どもがある程度の年齢に達している場合には、子どもの意思や希望を尊重するという例は多いようです。

このように、何らかのやむを得ない事情が生じた場合には、法的な手続きをふむことによって親権者を変えることができます。

親権者にならなくても、子どもをひきとって育てることは可能

親権は、子どもの世話やしつけをする監護権と、子どもの財産管理などをする財産管理権の2つにわけられています。

ですから、場合によってはこの2つの権限を別々にわけて考え、親権者のほかに「監護者」というものを定めることができます。

「経済的な理由でやむなく子どもの親権は父親にゆずったが、母親として、どうしても自分のもとで世話やしつけをさせてほしい」というような場合には、監護者になる手続きをとるという手もありえるというわけです。

実際に過去の例でも、親権者となった父親が子どもの財産管理など後見人的な役割を負い、母親が監護者となって子育てをしたという例があります。

この監護者を定める際も、家庭裁判所に調停あるいは審判を行なうための申立てを行ないますが、監護の内容そのものについて夫婦間でまとまらなかった場合にも、調停で決めてもらうことができます。

なお、監護者の変更についても親権者の変更と同様で、「子どもの利益のため変更の必要がある」と家庭裁判所で認められたときには、変更することができます。

複数の子どもがいる場合、親権者を分けることもできる

夫婦に子どもが2人いる場合、たとえば上の子はお父さんが、下の子はお母さんがひきとる、という例もよく聞かれます。

離婚に際して、子どもがある程度の年齢に達し、子どもの意思や希望が尊重されているのであれば、それぞれの子どもの親権を別々にすることも可能です。

実際にあった裁判例では、

「離婚の時期がちょうど長女の受験とかさなるので、生活環境が大きく変化するのは好ましくない。そこで、離婚後も同じ住所に住み続ける父親を長女の親権者とし、一方、長男はまだ中学進学の時期で、父親から度をこえたせっかんを受けているという事実もあったため、長男の親権者は母親に決定された」

というのがありました。

しかし、これまでも述べたように、たとえ複数の子がいるとしても、「どちらの親が子どもの養育者としてふさわしいか」という基準によって親権者が決定されますから、「上の子どもはお父さんに、下の子はお母さんにひきとられるのがもっとも妥当である」のような判断がなされることは、まずありません。

もともと一人っ子であるならともかく、血をわけた兄弟や姉妹がいるのに、それを親の事情によってばらばらにして育てるというのも、いかがなものでしょうか。

可能なかぎり、親権者はどちらか一方に決定されることがのぞましいと思われます。