店舗賃貸借類似の契約公正証書

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店舗賃貸借類似の契約

独立した区画の賃貸という要素が強い場合には、借地借家法が適用されて、貸主側の更新拒絶・解約申入れ等が制限される余地があります。そのような事態を回避するためには、貸主側としては、区画の賃貸という要素よりも営業の許可に重点をおいた契約形式をとる必要があります。

区画貸し契約公正証書

本公証人は、当事者の嘱託により、その法律行為に関する陳述の趣旨を縁取し、この証書を作成する。

○○商店株式会社(以下「甲」という)と△△有限会社(以下
「乙」という)は、次のとおり契約を締結した。
第1条(出店の許可)甲は、甲が所有する○○マーケットの後記
の区画(以下「本件区画」という)において、乙が営業として
衣料品の販売を行うことを許可する。

○○県○○市○○町○○所在の○○マーケット2階
別紙図面の斜線で示した区画
第2条(本契約の期間と契約の更新方法)本契約の期間は、平成
○○年○月○日から平成○○年○月○日までの1年間とする。
2 本契約は、期間満了3か月前に、乙から甲に申し出ることに
よって、甲が検討し、合意した段階で更新するものとする。更
新期間は1年間とし、後も同様とする。
第3条(営業料金と支払方法)乙は、甲に対し、本件区画で営業
をなすについて、その対価を月額○○万円とする。
2 前項において対価とは、営業料金をいう。
3 本条の対価は、毎月末日までに翌月分を甲の指定する銀行口
座に送金して、これを支払うこととする。
第4条(保証金)乙は、本日、甲に対し、保証金として金○○○
円を預託し、甲はこれを受領した。
2 保証金には利息を付さないものとする。
3 保証金は、本契約が終了し、乙が甲に対する本件区画の明渡
しを完了した後、甲において、遅滞なく前項の保証金を乙に返
還することとする。
4 甲は、乙に対する未払の債権を有している場合には、保証金
をこれらの支払に充当することができ、その残額のみを返還す
ることができる。
5 前2項における、甲が返還する保証金は、あらかじめ指定し
た乙の銀行口座に送金してこれを行う。
第5条(営業内容)乙は、本件区画においては、衣料品の販売の
みを行うものとし、それ以外の営業を行ってはならない。
2 乙の本件区画における営業時間は、○○マーケットの営業時
間に従うものとする。
3 前項において、書面による事前の甲の承諾がない限り、乙は、
○○マーケットの営業時間内は必ず営業を実施しなければなら
ない。
第6条(区画の変更)甲は、必要に応じて、○○マーケット内に
おいて、乙に対し、売り場等、本件区画の変更を指示すること
ができる。
2 前項の指示に、乙は従うこととする。
第7条(営業設備)甲は、乙と協議の上、本件区画内に乙の営業
に必要な設備を設置することを要し、かつ、これを乙に使用さ
せることとする。
2 乙は、自ら営業に必要な設備を本件区画内に設置することが
できる。ただし、あらかじめ、甲の事前の書面による承諾を要
する。
3 前項の設備は、本契約終了時に乙が自らの費用で取り外して
撤去することとする。
第8条(光熱費等の負担と支払方法)乙が営業を実施するために
必要な光熱費等の費用は、乙がこれを負担する。
2 前項の費用の支払は、毎月15日までに前月分の料金を甲が乙
に請求し、乙が請求のあった月の末日までにその金額を甲に対
して支払うことにより行う。
3 本条の支払いは、第3条第3項に定めるところのものを準用
する。
第9条(営業指導)乙は、本件区画につき、自らの名義・計算に
おいて営業を行うものとし、商品の不備や欠陥等による損害に
ついては、すべて乙がその責任を負う。
2 乙は、下記事由につき、本件区画内においては、甲の営業指
導に従うものとする。
① 営業に関する衛生管理
② 商品の搬入方法
③ 価格表示の方法
④ 従業員の服装または接客態度
⑤ その他、上記に関連する事項
第10条(契約の解除)甲は、乙が次の一つに該当する場合、催告
を要することなく直ちに本契約を解除することができる。
① 2か月以上営業料を滞納した場合
② 乙が本件区域内において、甲の顧客、その他第三者におい
て損害を与えた場合
③ その他乙が本契約の他の条項の一に違反した場合
第11条(契約終了に基づく原状回復)乙は、本契約が期間満了な
いし解除によって終了した場合には、直ちに本件区画から乙の
所有または管理する物件をすべて撤去することとし、本件区画
を原状に復して返還しなければならない。
第12条(移転料等の名目における金銭交付請求の禁止)乙は、契
約の終了に伴い、移転料その他、名目のいかんを問わず甲に対
して金銭を要求してはならない。
第13条(合意管轄)本契約の権利義務関係につき、紛争が生じた
場合には、甲の住所地における管轄裁判所を第一審裁判所とす
ることを、本書面において甲乙双方は合意した。
第14条(協議)本契約に定めのない事項につき当事者間に争いが
生じたときは、甲乙協議の上、解決にあたるものとし、その決
定は、別途、定めることとする。
以上
本旨外要件
住 所  東京都○○区○○町○丁目○番○号
職 業  会社員
貸 主  ○○○○ 印
昭和○年○月○日生
上記の者は運転免許証を提出させてその人違いでないことを証明させた。
住 所  東京都○○区○○町○丁目○番○号
職 業  会社員
借 主  ×××× 印
昭和○年○月○日生
上記の者は印鑑証明書を提出させてその人達いでないことを証明させた。
上記列席者に閲覧させたところ、各自その内容の正確なことを承認し、下記に署名・押印する。
○○○○ 印
×××× 印
この証書は、平成拾七年○月○日、本公証役場において作成し、下記に署名・押印する。
東京都○○区○○町○丁目○番○号
東京法務局所属
公証人  ○○○○ 印


この正本は、平成拾七年○月○日、貸主○○○○の請求により下記本職の役場において作成した。
東京法務局所属
公証人  ○○○○ 印

 

貸主側の更新拒絶・解約申入れ等が制限されることもある

出店者が独立の名義・計算で営業を実施する場合、本来であれば消費者と契約関係に立つのは出店者だけであり、スーパー経営者はこれとは何ら関係はないはずです。しかし、そのような場合であっても、外観上スーパーマーケット自身から直接商品を買ったかのように消費者に受け取られる場合があります。とくに、出店者がその使用する包装紙等にスーパー経営者のロゴなどを使用しているような場合には、消費者がそのように理解をするのもやむを得ないことでしょう。そこで、スーパーを経営する企業自身も商法上の名板貸責任(他社が行う営業に自社の商号や名称の使用を許すこと)等の取引上の責任を負う余地があります。デパート内の食品売り場のように、ショーケースなどだけで区画が仕切られている場合は、その部分が建物の構造として仕切られているわけではなく、戸締りもできないのですから、排他的な支配は不可能であり、賃貸借の目的物になりません。それ故、借地借家法の適用もないわけですが、念のため、売り場が独立の構造をもたない「区画」であることを契約書に明記しておくとよいでしょう。