抵当権・根抵当権設定の公正証書の作り方

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抵当権・根抵当権設定契約とはどんな契約なのか

大阪を拠点に自然化粧品や健康食品を販売していた山田さんは、新商品の人気もあって順調に売上げを伸ばしていました。そんなとき、九州で美容関係の多角経営をしている鈴木さんが、「新商品を店舗販売したいので、定期的に仕入れたい」と申し入れてきました。喜んだ山田さんは、新商品を大量に卸しました。しかし、最初は順調に取引も進んでいたのですが、どうも鈴木さんの経営が思わしくないらしく、支払いが滞るようになってきました。不安になった山田さんは、今後の売掛金を担保するものを提供してほしいと、鈴木さんに対して申し入れることにしました。調べると、鈴木さんには、経営する会社所有の不動産のほかに、個人所有の不動産もあることがわかりました。また、親族にも地主が多いということです。

ここで挙げた具体例のような売掛金や貸金債権を担保するために、さまざまな担保の方法があります。よくみられるのが、債務者の関係者に保証人(連帯保証人)になってもらう方法です。この場合、保証人の全財産が担保となります。これに対して、債務者や第三者の所有する不動産を担保にする方法があります。その代表例が、抵当権・根抵当権で、もっともポピュラーな担保の方法といえるでしょう。

①抵当権とは

抵当権は、特定の債権を担保するものであって、もし、債務者が弁済できなくなったときには、目的となっている不動産を競売にかけて、その代金を返済に充てることができるという権利です。民法上は、抵当権の対象は不動産ということになっていますが、その他の法律によって、他の物件(例えば、鉱業権や工業所有権、採掘用機械・器具、農業用機械、立木など)も対象とすることができます。抵当権を設定する契約を「抵当権設定契約」といいます。抵当権の設定は債務者に限らず、第三者でもできます。この第三者のことを「物上保証人」といいます。前述の例では、山田さんの取引き相手(債務者)は鈴木さんの経営する会社(法人)ですが、鈴木さん個人名義の不動産や鈴木さんの親族名義の不動産に抵当権を設定してもらうこともできるのです。抵当権は、対象となっている不動産だけを担保とするものです。保証人の場合は、その人が所有する全財産が担保となります。ただ、保証人の財産はゼロになる可能性がありますし、行方不明・死亡してしまえばそれまでです。これに対して、不動産はある程度の資産価値は望めますし、なくなることも通常ないので、担保としては安定しています。

②根抵当権とは

根抵当権とは、当事者の間で発生する多数の債権を、一定の枠内でまとめて担保する抵当権です。普通の抵当権は、それが担保する債権が弁済されて消滅すると、その使命を終えて消滅してしまいます。同じ当事者間で再び債権債務が発生しても、それを担保するには、再び、抵当権設定契約を結ばなければなりません。しかし、根抵当権の場合には、当事者間で次々と発生する多数の債権債務をまとめて担保することになっています。もっとも、担保する金額は無制限ではなく、一定の枠内に限られています。この一定の枠のことを「極度額」といいます。根抵当権のもつこのような性質から、企業とそのメインバンク、企業同士のように、長期にわたって反復継続して取引のある者の間で発生する債権を担保するには、普通の抵当権よりも便利です。前述の具体例では、山田さんと鈴木さんの会社は、これからも取引を反復継続していくようなので、抵当権よりも根抵当権の方がよいといえます。結局、山田さんとしては、鈴木さんの会社所有の不動産だけではなく、鈴木さん個人の不動産や鈴木さんの親族が所有する不動産にも、根抵当権を設定してもらうのが、ベストの方法といえるでしょう。

根抵当権設定契約の手続について

根抵当権も、普通の抵当権と同様、当事者の合意だけで契約が成立します。また、登記が第三者に対 する対抗要件(権利が自分にあることをを主張するための要件)であることも同様です。 ただ、根 抵当権では、設定後に担保すべき債権の範囲を変更する場合など、登記をしなければ効力を生じない 場合があります。 根抵当権設定の場合でも、可能な限り登記はしておくべきです。しかし、登記で きない特別な事情がある場合には、公正証書などによって、権利関係を明らかにできるようにしてお くべきでしょう。

作成にあたっての注意点(抵当権)

抵当権設定契約について公正証書を作成する場合には、以下で述べることについて十分に注意してく ださい。他の契約と大きく違っているところは、いずれも債権を担保するための契約であることです 。担保すべき債権があってこそ、抵当権の存在意義があるのです。ただ、担保される債権の発生原因 となる貸金契約や売買契約は、抵当権設定契約とは、法律上は、別個独立の契約となっています。

①当事者の記載

担保される債権の発生原因となっている貸金契約や売買契約と抵当権設定契約は別の契約です。債務 者所有の不動産に抵当権を設定する場合は債務者と債権者がそれぞれ抵当権設定者、抵当権者となり ます。第三所有者(担保目的物を所有する第三者)の不動産に抵当権を設定する場合は、第三者と債 権者が抵当権設定者・抵当権者となります。

②被担保債権の特定

抵当権によって担保される債権を「被担保債権」といいます。被担保債権のない抵当権設定契約は無 効です。そのため、公正証書でも被担保債権の特定は必要となります。具体的には、当事者(債権者 ・債務者)、日付、発生原因(被担保債権の発生原因となる契約など)債権額などを記載して特定し ます。

③不動産の表示

抵当権設定契約の目的物は不動産です。目的物をはっきりさせるために、不動産の表示をしなければ なりません。そのために、不動産の登記簿謄本を登記所(法務局)から交付してもらっておきます。 謄本はできるだけ直近のものを使用します。時間が開くとその間に、不動産をめぐる権利関係に変化 が生じるおそれがあるからです。登記簿謄本に記載してある事項によって、不動産を表示します。土 地であれば、所在・地番・地目・地積、建物であれば、所在・家屋番号・種類・構造・床面積などに よって表示することになります。

作成にあたっての注意点(根抵当権)

根抵当権設定契約の場合でも、基本的なところは抵当権設定契約と同じです。ただ、被担保債権が一 定範囲内の多数に及ぶという違いから、いくつかの相違があります。

①被担保債権の範囲を定める

被担保債権は多数の債権を対象としますが、特定することはもちろん必要です。特定の方法としては 、まず、取引の種類によって特定する方法があります。たとえば、「消費貸借取引」、「売買取引」 などです。登記実務で利用されている取引名称を使用するようにしてください。次に、基本契約の名称 によって、特定する方法があります。契約の日付に加えて、「商品売買基本契約」といった名称をつ けます。なお、商人(企業)間では、手形や小切手によって取引が行われることが多いので、「手形 債権・小切手債権」も記載しておくとよいでしょう。

②極度額を定める

根抵当権は極度額という一定の枠の中で、被担保債権を担保します。極度額も記載しておきます。