承継執行文とはどんなものなのか

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承継執行文とは何か

IT関連会社の立上げが成功し、上場まで果たした山田さんは、六本木に事務所を構えて取引を拡張していました。そんなとき、取引き先のX会社がY会社と合併し、社名は「Y会社」となりました。山田さんの会社はX会社に対して多額の債権をもっていて、執行証書も作成しています。ところが、Y会社は債務の履行期限が到来したのに、資金繰りが悪いらしく弁済する様子がありません。山田さんはしびれを切らせて、Y会社に対して強制執行をすることにしました。ただ、手元の執行証書を見ると、債務者名は「X会社」となっています。せっかく執行証書まで作成しているのに、これを利用して強制執行をすることはできないのか、山田さんは悩んでしまいました。

この例のように、債権債務関係にある当事者が、いつまでもそのまま債権債務関係にあるとは限りません。当事者のいずれかについて、包括的に法律的地位が移転することがあります。具体的には、一方が死亡して相続が生じるケースがあります。また、当事者が会社などの法人であれば、合併することもあります。一方、債権そのものが、債権者から第三者に譲渡されるケースもよくあります。これらの場合に、元の当事者間でせっかく執行証書を作成していたのに、それを使用して強制執行ができなくなってしまうのでは、いかにも不公平です。例えば、債務を負っている会社が合併によって強制執行を逃れることができてしまいます。また、債権譲渡の場合に執行証書の効力もいっしょに移転しないのであれば、債権を譲り受けたくないという事態が生じてしまいます。そのため、たとえ債権債務関係にある当事者に地位の移転などがあっても、すでに作成済みの執行証書を利用することができます。ただ、そのまま強制執行ができるのでは、不都合も生じます。例えば、債権の相続があると、債務者にとっては、知らない者からいきなり強制執行を自分の財産にかけられることになるのです。そのような不都合を避けるために、債権債務関係が承継されたことを示す執行文を執行証書に付することになっているのです。この執行文を「承継執行文」といいます。

承継執行文の手続きについて

執行証書に承継執行文の付与を受けて強制執行に入るには、以下のような手続を経なければなりません。

①公証人に申し立てる

承継執行文を付与してくれるのは、執行証書の原本を保管している公証人です。執行証書の作成を依頼した公証人のいる公証役場に行って、承継執行文の付与を申し立てましょう。

②承継の事実を証明する

民事執行法によると、債権債務関係が承継された事実が、公証人にとって明白であるか、債権者が承継の事実を証明する文書を提出したときに限って執行文が付与されます。この点は、条件成就執行文と同様です。公証人にとって承継の事実が明白な場合などは非常にまれなので、ほとんどのケースで、債権者は文書によって公証人に対して、承継の事実を証明しなければなりません。証明の方法は文書に限定されています。証人を公証役場に連れて行って、公証人の前で証言させる方法は認められていません。主に以下のような文書を提出して証明することになります。

合併のケース

合併した会社については、商業登記簿にその旨が記載されています。あらかじめ法務局(登記所)に行って、商業登記簿謄本の交付を受けておきましょう。

相続のケース

相続があったことは戸籍簿に記されています。市区町村役場で、戸籍謄本の交付を受けておきます。

債権譲渡のケース

債権譲渡をした場合、それを債務者や第三者に主張できるように、債権者は配達証明付きの内容証明郵便を債務者に送付します。内容証明郵便は、郵送者・郵便局・受取人の 3者に同一の書面が証拠として残される特別な郵便です。配達証明は、相手方(債務者)に郵便が配達されたことを証明してくれる文書です。債権譲渡のケースでは、内容証明郵便と配達証明を提出して、債権譲渡の事実を証明します。

③公証人に対して証明できない場合

文書では公証人に承継の事実を証明できない場合には、裁判所に対して執行文付与の訴えを提起します。管轄の裁判所は、債務者の住所地(会社の場合は本店の所在地)の裁判所になります。ここでは、証明方法は文書に限られません。承継が認められれば、判決の正本と確定証明書を公証人に提出して、承継執行文を付与してもらえます。

④送達する

承継執行文は執行証書の末尾に記載されますが、強制執行をするには、これを債務者に送達しなければなりません。その際、承継の事実を証明するために提出された文書の謄本も送達されます。これらを見ることによって、債務者も、現在の債権者がだれであるかということ、自分が債務を負っているということを認識し、反論や防御の機会が与えられるのです。