だれが強制執行するのか

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裁判所と執行官について

強制執行を担当する執行機関には、「裁判所」と「執行官」の二つがあります。強制執行は、普通の裁判のように法廷で当事者が対峙して、それに対して判決を下すという場面とは異なります。ここでは、財産の処分という実力行使がなされます。執行官については、多くの人にとって、なじみがないと思います。執行官は各地方裁判所に置かれる国家公務員です。国家公務員とはいっても、裁判官のように国から固定された給与を受けているわけではありません。執行官は、自分が担当した個々の執行処分によって受け取る手数料をその収入源としています。強制執行の手続に入るときには、執行官に支払う手数料分も費用としてかかるので、その分の出費は覚悟しておくべきでしょう。 強制執行をしようとしている財産によって、執行機関が裁判所になるのか、執行官になるのかが異なってきます。強制執行の対象が土地・建物といった不動産、債務者が別の第三者に対してもっている債権である場合には、裁判所が執行機関になります。これに対して、家や倉庫内の動産に対して強制執行をかける場合には、執行官が執行機関になります。

強制執行の申立ての要件について

IT関連の会社を経営している山田さんは、取引先が債務を支払わないため、裁判所に対して強制執行を申立てる決意を固めました。もともとやり手の山田さんは、契約段階で公正証書を作成し、執行認諾約款もしっかりとつけて執行証書としてあります。さっそく、山田さんは、管轄の地方裁判所へ行き、執行担当の窓口で申立てをしました。ところが、対応した書記官によると、執行文が付与されてないので、申立てを受けられないというのです。

この例の山田さんのように、債務者からの弁済が遅れていると、債権者としてはすぐにでも強制執行を実行して、債権を回収したいところです。しかし、強制執行という手続は、国家権力によって、債務者の財産に対して直接の実力行使をする手続です。人権を制約する度合いも高いので、間違いがあってはいけません。そのため、法律では、強制執行の申立てが認められるための要件を定めています。確かに、公正証書に執行認諾約款がつけられて執行証書となっていると債務名義となり、強制執行をすることができることは、すでに説明したとおりです。ただ、執行機関は、債務名義が作成される過程に立ち会っていたわけではないので、本当にそのまま執行してよいのかを内容的に判断できません。そこで、民事執行法によって、「執行文の付与」と「債務名義の送達」という手続が要求されているのです。

執行文の付与とは

いかに債務名義があったとしても、そのまま強制執行に移ってよいとは限りません。一定の条件が満たされたら債務を支払うとか、ある期限が到来したら債務を支払うといったケースでは、条件の成就や不確定期限の到来がなければ、強制執行をすることはできないはずです。また、債務者が死亡して相続が生じると、債務を相続した者に対して強制執行をすることになりますが、そのケースでは、債務名義に記載されている債務者とは別の者に対して手続をすることになります。 これらのケースで、執行機関が面倒な判断をしなくても済むように、あらかじめ適切な機関が判断をして、その結果を債務名義の正本の末尾に付記することにしています。この付記する文言が「執行文」なのです。つまり、執行文とは、債務名義に記載されている債権債務関係が実際に存在し、しかも強制執行できる効力をもつことを公に証明する文言なのです。 執行文の付与は、債権者の申立てによって行われます。執行文を付与するのは、原則として、事件記録のある裁判所の書記官となっています。ただ、執行証書の場合には、その執行証書を保管している公証人となります。山田さんとしては、その執行証書の作成を嘱託した公証人のいる公証役場に行って、執行文を付与してもらうことになります。

債務名義の送達とは

執行文が付与されたら、今度は、債務者に対して債務名義を送達しなければなりません。入れ違いでお金を振り込んだなど、債務者として強制執行を防御する理由があり、それを主張する機会を与えるためです。条件成就執行文や承継執行文とともに、それぞれの証明文書も送達します。なお、通常、債務名義の送達は、裁判所に対して申立てをしますが、執行証書のケースでは、やはり、公証人に対して申立てをすることになります。