クレジット契約についての公正証書の作り方

スポンサーリンク

期限の利益喪失約款に注意する

長い間自動車修理工場で働いていた山田さんは、独立して自動車販売業を始めることにしました。ただ、自動車を一括払いで購入してくれるお客はなかなかいないので、分割払いの形をとることが多くあります。不景気の昨今、分割払いでさえも途中で滞ってしまうことすらよくあることです。そんなとき、山田さんは、友人から、公正証書にしておくといざというときに便利だということを聞きました。そこで、山田さんは顧客との間の割賦販売契約を公正証書にすることにしました。

私たちの生活の中で、売買代金を分割払いで中長期にわたって支払うケースはよく見られます。土地・建物や自動車、バイク、パソコンなど多くの商品を、分割払いで購入することができます。実際に分割払いで購入した経験のある方はお気づきでしょうが、契約を交わすときに記名・押印する契約書の裏面には、虫眼鏡で見なければ読めないほどの細かい文字で、詳細に契約内容が記載されています。契約のときによく読んでいなくても、表面に記名・押印した以上は、原則として、それに従わなくてはなりません。この記載は、販売業者が大量の顧客との契約を効率的に処理するためのもので、あらかじめ一方的に定めているもので「約款」といわれています。 専門家の目から見ると、この約款は消費者側にとって非常に厳しい内容になっています。しかし、ほとんどの業者が横並びで、ほぼ同じ内容の約款を使っているので、消費者としては半強制的に約款に従って契約をしなければならないのが実情です。そこで、割賦販売法や割賦販売法施行令、通達などによって、割賦販売については一定の規制が施されています。公正証書を作成する場合にも、この規制には十分注意をしなければなりません。

割賦金の支払いが滞った場合

山田さんが心配する割賦金(分割して払うお金)の滞りはよくあることです。そのために、業者の方から一方的に契約を解除できるとする「失権約款」、残り代金を全額すぐに請求できるとする「期限の利益喪失約款」がつけられているのが通常です。ただ、消費者保護のために、割賦販売法では、これらの約款について規制をしています。つまり、同法5条1項では、「割賦販売の方法により指定商品を販売する契約について割賦金(分割して払うお金)の支払いの義務が履行されない場合において、20日以上の相当な期間を定めてその支払いを書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、割賦金の支払いの遅滞を理由として、契約を解除し、または支払い時期の到来していない割賦金の支払いを請求することができない」と規定しています。そして、2項で「前項の規定に反する特約は、無効とする」と定めています。公正証書を作成する際には、これらの点に注意することが必要です。

早期完済の場合

消費者に臨時の収入があった場合などは、逆に、期限よりも早期に割賦金(分割して払うお金)を支払ってしまうケースもあります。そのような場合に備えて、経済産業省の通達によって、早期完済の場合の条項を設けておくことになっています。例えば、10回払いのときに5回まで支払った後、残りの分を一括で払うといった「早期完済」ができることや、その場合の利息の払い戻しの方法などについての定めがなされます。

手形によって支払う場合

現金での支払いが多い割賦販売ですが、商売が絡んだりして手形で決済されることもあります。その場合には、権利義務関係を明確にしておくために、手形要件(額面・満期日・支払い場所など)をすべて公正証書に記載しておく必要があります。公証役場に行く前に、手形要件はすべて決定して、記入しておくようにしましょう。

注意点

この他にも、割賦販売法によって、各種の規制が施されています。多くの顧客との契約を一度にさばく約款は便利なものですが、ひな型を作成する場合には、あらかじめ専門家の意見を参考にしたり、公証人に相談しておくのがよいでしょう。

立替払契約の公正証書とは

分割払いの場合には、信販会社が販売業者に立替払いをして、その後は、消費者が信販会社に対して分割払いをしていくという形態もあります。いわゆる「立替払契約」といわれているものです。この場合には、公正証書は、信販会社と消費者との間で作成することになりますが、やはり割賦販売法の規制の対象となっています。

割賦販売法に対する規制

※販売条件(代金・支払期間、支払回数、実質年率など)の表示義務
※契約書面の交付義務
※業者からの解除制限(20日以上の期間を定めて催告をする必要がある)
※損害賠償、違約金の額の制限
※クーリングオフ(消費者は8日以内であれば無条件で申込の撤回または契約の解除ができる)
※支払い停止の抗弁(販売業者とのトラブルを理由に信販会社などへの支払を拒める)