準消費貸借契約の公正証書を作成する
前述で、不慮の事故にあって資金難になった会社の例を挙げました。資金難になると、これらの仕入れにも困りますが、これまでに仕入れた製品の代金支払も困ることになります。考えられる方法としては、経営が安定するまで代金支払は猶予してもらって、借金をしているというかたちに引き直す方法があります。つまり、もともとある債務を、消費貸借の債務として処理するわけです。
このように、既存の債務を消費貸借の債務とする契約を、「準消費貸借契約」といいます。準消費貸借契約は、もともとの債権債務関係がはっきりしない場合に、それを明確にしてトラブルを回避または解決するために利用されることもあります。 準消費貸借契約の公正証書を作成する場合も、手続的なことは消費貸借契約の場合と同様の手続をふみます。
作成にあたって注意すること
準消費貸借契約の公正証書を作成する際に、特有の留意点として、次のようなものがあります。まず、既存の債務がはっきりと特定できるようにしておきます。次に、既存の債務がはっきりしたとしても、それが法律的に無効であれば、準消費貸借契約は有効には成立しません。例えば、大麻の売買代金を準消費貸借にして、何回かの分割払いにしてもらう契約を締結したとしても、大麻の売買自体が公序良俗(社会一般の秩序・道徳)に反して無効ですから、それに基づく準消費貸借契約も無効になります。