公正証書にするとどんな効力があるのか

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証拠としての効力や債務名義としての効力がある

公正証書の効力は、大きく、法律上の効力と事実上の効力に分けられます。公正証書の持つ法律上の効力については、民事訴訟法や民事執行法という法律に規定されています。事実上の効力は、これら法律上の効力を背景として認められることになります。公正証書の作成を考えるにあたっては、これらの効力について正確に理解しておくことが必要です。公正証書の持つ法律上の効力は、大きく二つに分けられます。一つは、訴訟の場での証拠としての効力です。もう一つは、強制執行手続きでの債務名義としての効力です。それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

訴訟の場での証拠としての効力もある

お金の貸し借りをして、その事実を公正証書に記載して残しておいたとします。期限が到来したにもかかわらず、借主が借金を返済してくれなければ、貸主が訴訟提起します。この場合に貸主が目指すのは、借主に借金の返済を命じる判決です。判決を得るためには、借金があった事実を証明しなければなりません。証明する責任があるのは原則として、貸主の側です。逆に言えば、借金をしていないことを、借主が証明すべき義務はないのです。たとえ、真実は借金があっても、それが訴訟の場で証明されなければ、支払いを命ずる判決が下されないのです。事実を証明するには、証拠を提出します。証拠の中では、文書がかなり有力なものとして扱われています。特に、当事者間で作成したものとして提出される契約書などは、かなり説得力のある証拠となります。証拠として文書が提出されると、二つの段階で証拠力が問題とされます。

形式的証拠力

第一に、本当に作成名義人が作成した文書なのか、ということが問題となります。偽造された文書など、裁判官は信用してくれません。これを形式的証拠力と言います。訴訟のルールについて定めている民事訴訟法では、228条 2項で、文書は、その方式や趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるべきときは、真正に成立した公文書と推定する と規定しています。つまり、公正証書であれば、真正に成立した公文書であると推定されることになります。推定されるということは、相手方当事者が反対の証拠を提出しなければ、そのまま公証人が真正に作成した文書と認められるということです。公正証書であれば、形式的証拠力が認められることになります。

実質的証拠力

文書が真正に成立した、つまり本当に作成名義人が作成したものと認められると、今度は、内容が真実であるかどうかが問題とされます。これを実質的証拠力と言います。証拠として提出された公正証書の内容が真実かどうかについては、法律上の規定はありません。公正証書は、公証人が、作成依頼をした嘱託人の陳述を聞いて作成します。裁判官のように、事実を裏付ける証拠を吟味したり、宣誓した証人の証言を聴き取るわけではありません。公証人が作成した公正証書だからと言って、その内容が100パーセント真実を反映しているとは限らないのです。公正証書に限らず、文書に記された内容が真実かどうかの判断は、裁判官がその証拠から受けた心証に従って、自由に判断することができます。これを自由心証主義といいます。もっとも、その判断は裁判官の好き勝手ではなく、合理的なものでなければなりません。提出された証拠から考えて、そのような事実があったと常識的に納得できるものでなければならないのです。ただ、法律のプロとして、長年の経験があるものが作成した文書である公文書なら、その内容についても、合理的で真実を反映していると考えられるのが通常です。結果的には、裁判官はかなりの信用性を持って公正証書の内容を評価することになります。それだけに、公正証書は、訴訟の場で証拠として強い効力を持つわけです。

強制執行における債務名義としての効力

強制執行をするには、債務名義が必要です。債務名義とは、強制執行によって実現しようとする権利の存在、内容を証明するものです。公正証書には、債務名義としての効力が認められることもあります。

債務名義としての公正証書

契約の内容を相手方が履行してくれない場合には、訴訟を提起して判決をもらうことになります。ただ、判決が出たとしても、それに従わない者もいます。その場合、勝訴したものは、さらに裁判所に申し立てをして、強制的に相手方の財産から回収することになります。これを強制執行と言います。強制執行の方法にはいくつかの種類があります。相手方の家の中にある動産を差し押さえて競売にかける方法、不動産を差し押さえて競売にかける方法、給与を差し押さえてそこから支払ってもらう方法など様々です。一般には、裁判で勝訴判決を得てから強制執行に入ります。しかし、一定の内容の公正証書にも債務名義としての効力があるので、訴訟を提起して勝訴判決を得なくても、すぐに強制執行に移ることができるのです。この効力こそ、公正証書の持つ最大の効力といってよいでしょう。

債務名義としての条件

公正証書であれば、必ず、債務名義になるかといえば、そうではありません。一定の条件を満たすことが必要です。これは、民事執行法22条5号で規定していますが、以下の二つの条件を満たす公正証書のことを特に執行証書と言います。

金銭の一定の額の支払いまたはその他の代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求

公正証書が債務名義としての効力を持つには、まず、その内容が、金銭の一定の額の支払いまたはその他の代替物あるいは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求でなければなりません。不動産や特定の動産の引渡しについては、いくら公正証書の内容となっていても、強制執行をすることはできません。「一定の」ですから、はっきりと100万円とか 10トンのコシヒカリなどと決まっていなければなりません。代替物とは、個性がなく、同じ種類、同じ量、同じ質のものを給付すればそれで足りるものを言います。ガソリン、コメといったものが該当します。有価証券とは、手形、小切手といった、財産権を現した証券です。公正証書の多くは金銭の支払いについてのものです。

債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの

たとえ 前述の条件を満たしていたとしても、さらに、債務者がすぐに強制執行に服する旨の陳述が記載されていなければ、債務名義にはなりません。この記載を執行認諾約款、又は執行認諾文言、執行受諾文言といいます。つまり、公正証書というだけではなく、執行認諾約款が備わってはじめて、すぐに強制執行に移ることができるものとなるのです。これはとても重要なことなので知っておいてください。

事実上の効力もある

証拠としての効力や債務名義としての効力は、それぞれ民事訴訟法や民事執行法といった法律に規定されている法律上の効力です。しかし、公正証書には、これらの法律上の効力を背景にした事実上の効力があります。公正証書の法律上の効力は、訴訟が提起されたり、債権者が強制執行を決意した場合に威力を発揮します。ただ、相手方としては、そのことを意識しているだけで、かなりのプレッシャーを受けることになります。もし、借金の返済を期限までにしないと、いつ強制執行されるか分からないという不安は、債務者に対して返済を促す効力を持つことになります。その意味で、公正証書が債務名義となるための条件である執行認諾約款は、法律上の効力だけでなく、事実上の返済を促す作用を持つのです。