どんな内容でも公正証書にできるのか

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どのようなことが公正証書にできるのか

公正証書は、公証役場で公証人が作成するため、信用性の高い文書とされています。ですから、なるべく積極的に利用してみたいと思う人も多いでしょう。では、どのような内容のものを公正証書にすることができるのでしょうか。一般に私人間(当事者同士)で作成される契約書や念書は、さまざまな内容を書面にすることができますが、公正証書の場合はどうなのでしょうか。この点については、以下の点に注意しておくとよいでしょう。

個人の権利義務に関係があること

公正証書は個人の権利義務に関係することを取り扱います。この権利義務とは、法律的な権利義務を意味します。単なる事実上の事柄は対象としません。もっとも、すでに説明したように、社会で扱われる多くの事柄は、法律的に構成することが可能です。実際には、かなりのことが公正証書作成の対象となります。公正証書はその対象となる事項に応じて、次のように、大きく二つに分類することができます。

法律行為に関する公正証書

売買契約、賃貸借契約などの契約や遺言といった法律行為が対象とされます。

個人の権利の取得・変更・消滅に関する事実を証明する公正証書

私人の権利について、それを得たり、失ったり、変更したりする原因となる事実を証明する場合にも、公正証書を利用することができます。

公正証書にすることができない場合

すでに説明した ※に関することなら、何でも公正証書にすることができるのでしょうか。例えば、民法などの法律に反する事項をその内容として公証するわけにはいきません。違法、無効な内容のものを公正証書にすることはできません。もし、違法、無効な内容の疑いがある場合には、公証人は、関係者に対して注意をして、なおかつ、その者に必要な説明をさせなければならないとされています。以下のものについては、公正証書にすることはできません。

当事者が制限能力者である場合

未成年者や成年被後見人(精神上の障害があるため判断能力を欠く者)といった制限能力者(判断能力が十分でないため、取引などの法律行為を制限されている者)は、原則として、単独では契約を結ぶことができません。もしこれらの者が当事者になっていると、契約は取り消すことができるものとなります。当事者が制限能力者である場合には、公正証書は作成できません。

公序良俗に反する内容のもの

民法では公序良俗に反する内容は、絶対的に無効であるとしています。公序良俗とは、社会一般の秩序、道徳のことです。公序良俗に反する内容のものは公正証書にすることはできません。例えば、人身売買の契約、とばくによる借金を内容とする契約などです。

法令に違反する内容のもの

内容が民法以外の法令に違反する場合にも、公正証書にすることはできません。事前に調査しておくのがよいでしょう。

公正証書を作成しなければならないケースもある

一方、法律によって公正証書を作成しなければならないとされていることもあります。当事者に慎重になってもらったり、関係者に対して権利義務関係をはっきりさせるために、公正証書の作成が義務付けられている場合があるのです。

任意後見契約を結ぶ場合

高齢化社会になるにつれて、老後の痴呆症などを心配する人も増えています。そこで、事前に自分の意志で、財産を管理してくれる後見人を選任しておくという任意後見契約を結ぶことができます。任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によらなければならないとされています。

マンションなどの管理規約

マンションなどの区分所有建物の管理規約は、原則として、区分所有者の頭数と議決権の各3/4以上の多数で決定しなければなりません。しかし、マンションの分譲前に、分譲業者が単独で管理規約を定めることもできます。その場合には、管理規約については、公正証書を作成しなければなりません。

事業用借地権の設定

土地の賃貸借は、通常は手厚く保護されています。契約は更新されることが原則であり、契約が終了するときには建物の買い取りも認められています。これに対し、事業用借地権では、更新もなく、契約が終了すれば建物を撤去して、土地を明け渡さなければなりません。借地人には厳しい内容の契約なので、慎重を期するため、公正証書の作成が義務付けられています。