公正証書とはどんなものか

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いざというときに有力な証拠になる

私たちは日常生活の中で他人と約束を交わすことがしばしばあります。そうした約束は、多くの場合、「契約」として法律的にとらえることができます。親しい友人との間でお金の貸し借りをしたり、一冊の本を貸し借りするのも、法律上は契約が成立したものとして説明することができます。また、ある人が死後自分の所有している財産を特定の人物に譲りたいという場合には、「遺言」によってその意思を実現することができます。これは、契約ではありませんが、法律的には立派な効果が発生し、原則として故人の意思に沿った遺産相続が行われます。このように、法律的な効果の生じる行為は、社会生活上いろいろな場面で見られます。しかし、ときには約束が守られずにトラブルになるケースもあります。こういったトラブルを避けるために予防として、「契約書」や「遺言書」を作っておきましょう。誰と誰が、いつ、どのような約束をして、仮にそれに違反したらどうなるか、といったことなどを詳細に書面上に記載しておくわけです。遺言状にしても、法律、(民法)の規定する一定の様式に従って自分の意思を明確にして残しておきます。このようにして、法律上のトラブル発生を事前に予防しておくことを、「予防法務」といいます。権利意識の高まりから、徐々に予防法務の考え方が広まってきています。

公正証書とは何か

事前に契約書を作成することは事実関係の証明に役立ち、いだ訴訟になったとしても威力を発揮します。ただ契約書や念書といっても、素人の作成したものだと大切な事項を欠いていたり、法律的に意味のない取り決めをしてしまう可能性もあります。また、悪質なケースでは、契約書が偽造されることすらあります。せっかく完璧な書類を作成していたとしても、長い年月が経過するうちに紛失してしまうこともあります。そこで、素人である私人(個人)が作成するよりも、確実な方法で証明手段となる書類を作成することが必要になります。そのために利用されるのが公正証書なのです。公正証書とは、公証役場という公の機関で公証人が作成する書類です。公証人とは、法律の専門知識をもった資格のある公務員です。元裁判官や検察官など、法律実務を長年経験してきた人の中から法務大臣が任命します。公証役場で公証人が正式に作成した書類については、私人が作成した書類よりも、高い証明力が認められます。また、証明力だけでなく、公正証書に基づいて強制執行、国家の力で強制的に権利を実現することができるという強力な効果も与えられることがあります。公正証書の作成を希望する場合、公証役場に行って、公証人に対して、書面にしてほしい内容を伝えます。公正証書の作成を公証人に依頼する行為を嘱託といいます。依頼する人を嘱託人といいます。公正証書の作成にかかる費用は、公正証書の種類、内容によって異なります。

公正証書を作成するメリットとは

確かに私人、当事者同士で契約書を作成する場合に比べて、公正証書の作成には手間ひまと費用がかかります。しかし、それでも公正証書を作成するメリットはどこにあるのでしょうか。例えば、山田さんが鈴木さんに対して、100万円を3年の期限で貸したとします。しかし、約束の3年の期限を過ぎても鈴木さんは一向に100万円を返済しないという場合、山田さんはどのようにすべきでしょうか。まず、山田さんとしては、直接鈴木さんに返済を請求します。しかし、鈴木さんが素直に返済しないこともありえます。公正証書を作成しておくと、このような場合にメリットがあるのです。

メリット有力な証拠となる

前述した例で、契約(金銭上し貸借契約)を結んだこと自体を鈴木さんが否定することがあります。その場合、公正証書として作成した書類を提示すれば、動かぬ証拠となります。また、鈴木さんがどうしても返済しないため、山田さんがやむを得ず裁判所に対して訴訟を提起したとします。その場合、お金を貸して返済を受けていないことは、山田さんの方が証明しなければなりません。たとえ借金の事実があったとしても、訴訟の場で証明できなければ、敗訴してしまいます。その場合に、公正証書を裁判所に証拠として提出すると、説得力のある有力な証拠となるのです。さらに、山田さんがうっかりして作成した公正証書を紛失してしまったり、火災で焼失してしまったとしても、心配は無用です。公正証書が作成されると、その原本は公証役場に保管されます。その原本を利用して、借金のあった事実を証明することができるのです。このように、公正証書は、まさかのときに有力な証拠となってくれるわけです。

メリットすぐに強制執行ができる

借金をした鈴木さんが期限までに返済をしてくれない場合、山田さんは訴訟を起こさなくても、強制執行することができます。強制執行とは、裁判所や執行官といった国家権力の力により、権利の実現を図る手続きです。公正証書と通常の契約書との最大の違いは強制執行ができるかどうかにあります。通常の契約書しか作成していない場合には、訴訟の手続きを経たのち、鈴木さんが判決に従って借金を返済しないときに初めて、山田さんは裁判所に申し立てて強制執行に入ることができます。そして、鈴木さんの財産を差し押さえて、そこから100万円の満足を受けることになります。しかし、公正証書を作成しておくと、訴訟の手続きを経なくても、山田さんはすぐに強制執行に入ることができるのです。つまり、鈴木さんが期限に返済をしなければ、すぐに裁判所に強制執行を申し立てることができるのです。

何でも強制執行できるのか

公正証書の最大のメリットは、時間と費用のかかる裁判抜きに、強制執行に入ることができるという点です。もっとも、どのような契約内容でも、公正証書によって強制執行できるわけではありません。金銭を支払う債務か、一定数量の代替物、有価証券(株式や債券など財産的価値のある権利が表されている証券)を給付する債務でなければなりません。不動産の引渡しなどは、対象とはされていないので注意しましょう。また、公正証書に債務者の「強制執行を受けてもよい」という文言(執行認諾約款)が記載されていなければなりません。