遺言や寄与分制度によって貢献度に応じた遺産の分配ができる
被相続人が農業や個人事業などを営んでいる場合、子どもの一人が家業を手伝っているというケースは決して珍しくありません。また、被相続人の療養看護を、特定の相続人が献身的に行っていたというケースもあることでしょう。
被相続人の心情や、特定の相続人の苦労を考えたとき、何もしていない相続人と苦労した相続人が法定相続分どおりに遺産を分割するのは不公平というものです。そこで被相続人の財産の維持や増加に、特別貢献した者(寄与者)のために『寄与分』という制度が設けられています。寄与分の額は、被相続人の意思とは関係なく、貢献(寄与)の程度を考慮して相続人の協議によって決められるのが原則です。
そして、遺産から寄与分を控除した価額が相続財産とみなされ(みなし相続財産)、寄与者は、通常の相続分にプラスして寄与分を取得することができます。遺言によって寄与分を指定することはできませんが、寄与者のために格別の配慮をした遺言をすることにより、寄与分を指定したのと同じ結果にすることは可能です。
遺言に寄与者への感謝の意を明記しておけば、ほかの相続人からも異論はでにくいものと思われます。
遺 言 書
遺言者○○○○は本遺言書により次のとおり遺言する。
一、長男○○○○は、遺言者の長患いのとき、遣言者が個人で経営
する△△酒店を遺言者のたっての願いで継いでくれただけでな
く 、療養・看護に心から尽くしてくれた。本来ならば、入院すべき
ところを遺言者の希望で自宅療養をしたために、長男がどれほど
財政的にも精神的、肉体的にも多くの苦労をしたかは、想像以上
のものがある。よって当然の報酬として、次の財産を相続させる。
(中略)
平成○年○月○日
××県××市××町×丁目×番×号
遺言者○○○○印
遺言者○○○○印