紛争の内容により申し立てる裁判所が異なる

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調停や審判と訴訟では申立てる裁判所が違う

相続に関する紛争は、家庭裁判所の家事調停及び審判と地方裁判所の訴訟の2つに分かれます。まず、家庭裁判所の扱いとなる紛争は、前述のように甲類と乙類に分類されています。乙類に分類される、遺産分割、寄与分、廃除とその取消の3つは、調停の対象になりますが、甲類の事件は手続的なものなので、調停の対象にはなりません。次に地方裁判所、つまり訴訟手続きになるのは、遺産の範囲の確認、遺留分減殺請求、相続欠格による相続権不存在確認などです。また、人事に関する争いは、家庭裁判所が調停を行った後でないと訴訟にはできません。これを調停前置主義といいます。

調停の申立先は、相手の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄です。審判は、被相続人が住んでいた場所か亡くなった場所の家庭裁判所が管轄します。ただし、寄与分に関する申立ては、遺産分割の申立がすでになされていた場合は、その家庭裁判所にだけ申し立てることが可能です。遺留分や遺贈などの相続に関する訴訟の管轄は、被相続人が亡くなった時に住んでいた場所の地方裁判所となります。

調停前の処分とは何か

調停前の処分とは、調停成立までに長期間かかることに配慮して設けられた仮の措置のことで、あくまで調停が申し立てられた後にとられるものです。また、この措置は、調停の進行中必要な場合や調停内容を実現するためなど、調停のスムーズな進行のためにとられる措置です。この措置は、裁判所の職権によることもありますが、当事者の申立てによる場合が大半です。なお、措置の内容については、とくに制限はありません。また、正当な理由なくこの措置に従わないときは、10万円以下の科料の制裁がありますし、審判の結果にも影響します。

審判前の保全処分とは

審判前の保全処分とは、家庭裁判所の行う執行力のある処分です。審理が長期にわたる審判事件もあるため、その間の保全の必要がある場合に認められます。この保全処分は、審判申立以後になされるもので、審判申立前には申請できません。その点は調停前の処分と同じです。ただし、いったん審判の申立てをした後に、家庭裁判所の判断で調停扱いになった場合は例外的に、保全処分を申し立てることができます。

なお、審判前の保全処分には、事案によっては多額の保証金が必要になることがあります。これは、民事保全法の担保に関する規定が準用されているためです。また、保全処分の対象となる事案と内容については、家事審判法、家事審判規則に規定があります。その中で相続に関するものとしては、遺産分割に関連して、遺産管理者の選任、仮処分、仮差押え、その他の保全処分が定められています。