修理が可能ならば修理費用、可能ならば時価相当額
まず、店を壊したことによる損害から考えてみましょう。店に限らず、塀を壊した、玄関を壊した場合など、加害者は原則として原状に回復しなければならない義務があります。具体的には、修理が可能な場合には、その修理費用が損害賠償額となります。破損の程度がはなはだしく、修理しても元に戻すことができない場合、あるいは完全に壊れてしまった場合には、その物の時価相当額が損害賠償額となります。時価の算出は、その品物の購入価格、同種の新品の価格、使用年数、物自身の原状などを参考にして決めることになります。
修理期間中の営業利益も損害賠償の対象となる
店の修理を行っている期間中、店を休業したり、あるいは店を縮小したために、本来あった営業利益が上がらなかったという場合には、営業利益の補償もしなければなりません。また、営業は再開したものの、利益が前に比べて落ちたという場合には、その差額も賠償の対象となります。問題は、営業補償の損害額は被害者が証明しなければならないことです。この証明ができなければ、損害がなかったことになり、被害者は損害賠償を取れないことになります。なお、車の飛び込みにより家屋が破損された場合、物的損害の他に慰謝料の請求を認めている判例もあります。深夜、家族が就寝中に自動車に飛び込まれたケースで、慰謝料として8万円を認めた判決(東京地裁八王子支部・昭和47年6月20日)や、建物の表玄関部分を損壊され、賠償交渉が難航し、年末年始を含む1か月以上にわたり表玄関にベニヤ板を打ち付けた状態で過ごすなど、家業上、生活上の不便を被ったとして慰謝料20万円を認めた判決(大阪地裁・平成15年7月30日)などがあります。
ペットが死亡した場合も損害賠償の請求ができる
犬や猫等のペットを、家族の一員同様に可愛がって育てている人は多いようです。それらの人にとっては、これは物損事故だといわれると、意外な感じを持たれるかもしれませんが、法律上は犬や猫などの動物は「物」なのです。自動車事故によって、ペットである犬や猫が死亡させられれば、当然、損害賠償請求ができます。では、損害額はいくらかということですが、ペットショップなどの値段で売買されているかを参考にして決めることになります。長い間、家族同然に飼ってきた犬の葬儀費用27000円、慰謝料として5万円を認めた例があります(東京高裁・平成16年2月26日判決)。