相続人以外の親族には慰謝料は認められないのか

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法定相続人に当たらない近親者にも慰謝料は認められる

死亡事故の場合の慰謝料に関する条文として、民法では「他人の生命を害したる者は、被害者の父母、配偶者、およびその子に対しては、その財産権を害せられざりし場合においても、損害賠償をなすことを要す」(711条)という規定があります。この規定は、近親者の慰謝料請求権を認めたものといわれていますが、これをめぐっていくつかの問題が起きています。一つには、この規定により慰謝料請求権を認めているのであるから、相続の対象となる死者固有の慰謝料請求権を認めるのはおかしいというものです。東京地方裁判所では、前述した最高裁判所の判決が出たにもかかわらず、近親者固有の慰謝料のみで解決した判決を出しています。また、ほかの一つは、この規定で認める近親者の範囲は、被害者の父母、配偶者、その子に限られるのか、あるいはこれは単なる例示に過ぎず、ここに掲げた以外の近親者も含まれるのかという問題です。古い判例では、民法711条は慰謝料請求権者の範囲を一定の近親者に制限したものというのが主流でした。

内縁の妻や同居している叔父・叔母に認めた判例もある

これに対して、近時の判例では、内縁の妻に対して、民法711条を類推適用して、慰謝料請求権を認めています。さらには、生計を共にする娘婿の死亡事故について、義理の母親の慰謝料請求を認めたもの(東京地裁・昭和47年8月18日)、死亡した被害者の叔父・叔母に、父母に準ずる者として慰謝料請求を認めたもの(東京地裁・昭和48年8月23日)、留守がちの母親に代わって、出生以来身の回りの世話をしていた祖母について、母親に劣らない精神的な苦痛を受けたとして孫の死亡についての慰謝料を認めた判例もあります。ただ、死亡慰謝料についての判決は、慰謝料総額はいくらというように、出される例がほとんどで、そのために死者の相続人と相続人に当たらない慰謝料を認められる近親者との間で、紛争になることがあります。例えば、嫁と子供が相続人の場合の父母(すなわち舅・姑)との争いなどです。もちろん、慰謝料総額の中には、近親者の慰謝料も含まれているわけですから、相続人だけが全額を取るわけにはいきません。親族同士ですから、できるだけ円満な話合いで解決することが望まれます。