示談金が支払われない場合に備えて成すべきことは
交通事故の解決は示談書を作成して終わりというわけにはいきません。示談書の作成と損害賠償金が引き換えならばいいのですが、分割払いや○月○日に支払う約束になっていれば、それが実行されるまでは終わらないのです。もし、示談条件に違反して、約束の期日に、示談金が支払われない場合には、どうしたらよいでしょうか。一般に、当事者同士でつくる示談書のことを私製証書といい、私製証書には強制執行ができる効力がありません。ですから、示談金を支払ってもらえない場合には、私製証書証拠として、裁判を起こして判決をもらい、その判決書をもとに相手の財産を競売するなどの強制執行をして回収を図ることになります。ところが、示談の内容を公正証書にしておくと、相手がこれに違反した場合には、裁判を起こす必要がなく、この公正証書に基づいて強制執行ができるのです。
公正証書にするための必要な手続きは
示談の内容を公正証書にするには、当事者双方が最寄りの公証役場に出向いて、公証人に対して、これこれの内容の示談書を公正証書にしてほしいと頼めばよいのです。あらかじめ作った示談書があれば、それを持参すればよいでしょう。公証役場では、本人かどうかの確認をしますので、実印と印鑑証明書を持参します。忙しくて代理人に頼む場合には、本人の実印を押した委任状(印鑑証明書付き)と代理人の印鑑証明書が必要です。その委任状には、示談条件をすべて書いておくことが必要です。公証人は示談について相談に乗ってくれるわけではありませんが、元裁判官とか検事とかをやっていた人が公証人ですから、申し出た示談の内容に法律的な間違いや不備があれば訂正してくれます。 公正証書により強制執行ができるためには、示談の内容が金銭の給付に関するものであること、債務者(加害者)が支払いを怠った場合には強制執行をされても異議がない旨の執行認諾条項を入れていることが条件となります。公正証書に要する費用は、示談金額により異なりますが、示談金額が100万円までなら5000円、1000万円までなら17000円というようにそれほどを高い費用ではありません。なお、保証人を立ててもらい示談書を作成するのもよいでしょう。また、場合によっては担保(土地等の抵当権)を設定した示談書をつくる方法もあります。要は、保険会社からいくら支払われ、本人がいくら支払うかによって、対応を考えることです。