強度の精神病で回復の見込みがないとき

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回復がむつかしい強度の精神病の場合が対象になる

法定離婚原因に当たる精神病は「強度で回復の見込がないとき」を言います。 精神病になるのは本 人の責任では全くありませんから、不貞や悪意の遺棄と異なって有責の配偶者に対する離婚を認める というのではなく、客観的に婚姻が破綻しているときには離婚を認めるという考え方の現れです。  ところで裁判所は「強度で回復の見込のないとき」をかなり厳格に文字通りに考えています。精神病 かどうかの診断はもちろん医師の判断によりますし、いったん精神病と診断されても回復の見込みが ないかどうかはしばらく治療期間を置かなければ医師だって判断できません。生死不明の場合でも三 年以上の時の流れを必要とするのですから、回復の見込みがあるかどうかもある程度の年数を要する ことになります。したがって、配偶者が精神病院に入院したからすぐに離婚請求をしてもまず認めら れません。

さらに離婚後の療養や今後の生活面での配慮が必要

それでは「強度で回復の見込のないとき」に当たればすぐに離婚を認められるかと言いますと、裁判 所はさらに離婚後の療養、生活などについてある程度めどがついた場合でないと離婚を認めるべきで ない、と判断しています。これは公的な扶助の貧しさを個人の犠牲と負担に帰するものであると批判 されました。 精神病にかかった配偶者が離婚後に苛酷な状態になるのを保護するために離婚を認め ないことは、貧しい福祉制度の下では、他の配偶者に苛酷な状況を強いる結果ともなっていました。 ただ徐々に公的な扶助制度が行き渡ってきたせいか、離婚後の精神病の配偶者の生活保証をあまり具 体的なところまで求めずに離婚を認める裁判例も出るようになりました。 また医学的に「強度の精 神病で回復の見込がないとき」というのは世間の常識で「あの人は精神病で治らないよ」と言う場合 よりもかなり制限されると思われます。しかしここで言う「精神病」に当たらなくとも、配偶者が精 神病、痴呆症などのため「婚姻を継続しがたい重大な事由」が生じていればその理由により離婚でき ます。二十数年前の事例ですが、妻が「アルツハイマー病」のため痴呆状態になったという事例で、 夫が自分の費用で離婚後の妻の生活保証を具体的にめどをつけたとはあまり言えないけれども、公的 な施設である特別養護老人ホームに終身入ることができるというケースで、この事例では夫は約七年 間妻の看護を続けましたが、妻は夫の顔さえわからず意思も感情の疎通もできない状態であり「婚姻 を継続しがたい重大な事由」があるとして離婚が認められました。問題は、相手方が重度の精神病で すから、話し合う能力も訴訟能力もないことです。こういう場合は、家庭裁判所に後見開始の審判を 申し立て、選任された後見人を被告として訴訟をすることになります。すでに、夫婦の一方の成年後 見が開始し、他方が成年後見人となっている場合は、成年後見監督人を選任して、この者を相手に訴 訟を起こします。