相手に不貞行為があれば離婚できる

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離婚裁判で問題とされる「不貞」は継続的な性的関係があること

夫がソープランドに行った、あるいは出張先でたまたま知り合った女性とホテルで一晩を過ごした、というように、継続的でない浮気は不貞でしょうか。 妻が同窓会で昔好意を寄せていた男性に声をかけられ、その後いそいそと一緒にお茶を飲みに行く、性的関係を求める気はお互いに全くないけれど、夫といるよ りはずっと楽しそうに過ごしているのは不貞だろうか。離婚で問題となる「不貞」は、小説やテレビドラマに登場する「不貞」と必ずしも同じ意味ではありませ ん。また宗教上の「(心の中においても)姦淫することなかれ」の意味とも違います。それは離婚では「不貞」が結局「婚姻を破綻させた」かどうかが問題とさ れるからです。一回限りの浮気であっても言葉の厳密な意味では不貞と言えますが、家庭や配偶者を大切にする気持ちの方が大きく、悔い改める気持ちもある、 というような場合には婚姻を破綻させたとまでは言えないでしょう。したがって、離婚において「不貞」とはある程度継続的な関係を意味すると考えてよいで しょう。

性関係を伴わない交際なら「婚姻を継続しがたい重大な事由」で

配偶者の他に継続的な不貞の相手がいる場合は離婚原因があることになります。不貞の相手と同居し家庭は捨てたのならば、不貞と悪意の遺棄という離婚 原因があることになります。もし夫が「一回でも女性を買った」ことを許せない妻がいて、そして夫のこの行為をきっかけとして夫婦関係がぎくしゃくとしてし まったという場合には、不貞と言うよりは「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるかどうかの問題として考えることになります。性関係を伴わない場合に不貞 と呼ぶかどうかは疑問があります。不貞とは言わない方がすっきりした定義になると思います。したがって性関係のない男女交際を続けることは不貞ではないけ れど、それが「婚姻を継続しがたい重大な事由」となっているかどうかの問題が残ることになります。同窓生と若かりし頃を語り合うことは単なる生活の彩り、 ちょっとした刺激程度であって婚姻を継続しがたい重大な事由とは解されないでしょう。でも、少し古い映画ですが、ロバート・デニーロとメリル・ストリーブ の映画「恋に落ちて」のように、妻以外の女性に「心からの恋」をし性関係を持つことは抑制しているけれど家庭に戻れば妻にもはや愛情を抱き続けられない、 妻から見れば自分の人格や立場を否定されているとしか思えないのであれば、婚姻を継続しがたい重大な事由があると解されるでしょう。同性愛の関係にある場 合も不貞と考えてよいでしょう。あるいは不貞にこだわらなくとも、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当します。判例もこのような場合に離婚を認めていま す。

一度許した不貞を原因として離婚請求できるか

旧民法には、姦通など離婚原因があった場合でも、夫婦の一方がこれを許した(宥恕した)ときは離婚の訴えはできないという規定がありました。現在は どうでしょうか。夫が女性関係を認め、今後その女性とは関係を絶つという誓約書を書いて妻の許しを得ていた事案で、妻からの離婚請求に、夫はすでに妻の宥 恕を受けているから離婚原因には該当しないと主張したのに対し、裁判所は、仮に宥恕したとしても全面的に宥恕したとは認められず、旧法のような離婚請求権 を当然消滅させるものではないと判決しています(東京高裁・昭和34年7月7日)。