離婚訴訟は家庭裁判所の管轄である
離婚訴訟は、平成16年4月1日から家庭裁判所で起こすことになりました(従来は地方裁判所)。しかし、どこの家庭裁判所に提起してもいいというわ けではありません。裁判には管轄という裁判所の縄張りみたいなものがあり、どこで裁判を起こすかは人事訴訟法によってきめられています。従来は(平成16 年4月1日以前は)婚姻住所地を第一順位とする段階的な専属管轄でしたが(人事訴訟手続法1条)、人事訴訟法では原告または被告の普通裁判籍となり簡明に なりました。これは専属管轄ですので、夫婦で起こす裁判所を合意して決めても(合意管轄)認められません。その一方、特に必要があると認められるときに は、離婚調停を行っていた家庭裁判所が、調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して、自ら調停を行った裁判所が扱うことができることになりました。 訴えの内容は、離婚することだけでなく、未成年者の子がいる場合には親権者、監護権者の指定、また財産分与、慰謝料の請求もできます。
訴訟は訴状を裁判所に提出することから始まる
まず、訴訟するには訴状を書きます。訴状には、当事者(原告・被告、離婚訴訟では本籍の明示が必要)、請求の趣旨、請求の原因とを記載し、原告が記 名捺印します。訴状のサンプルはこちらに掲載してありますので参照してください。そして、訴状を書き終えたら、訴状に収入印紙を貼って裁判所に提出しま す。訴訟の印紙額は、調停が一律1200円であるのと異なり、訴えの内容(訴額)によって異なります。また、訴状の提出に当たっては、裁判所からの書類の 送達や呼出しの費用にあてるために、切手を予納します。額にして1万円前後を切手数枚ずつにして予納するのですが、裁判所によって多少異なります。この 他、訴訟で証人が出廷する場合の旅費・日当が必要です。こうした訴訟費用は、訴訟で負けた側が負担することになります。訴状の提出が無事に終わると、裁判 所はこれを被告(訴えられた人)に送達し、口頭弁論期日を指定して、原告・被告両方を呼び出します。そして、裁判所は原告・被告双方からの主張を聞き、争 点を整理し、争いのある事実について証拠を提出させ、証拠調べをします。そして、事実を認定し、法律的判断を加えて、判決を言い渡します。この判決が送達 されてから、2週間以内に上訴をしなければ、判決は確定し、訴訟は終わることになります。
離婚原因があるのに離婚が認められない場合とは
民法770条1項は、1号~5号まで離婚原因を定め、その2項で、1項各号の事由がある場合でも「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めると きは、離婚の請求を棄却することができる」と定めています。この2項の請求棄却条項は、裁判官の主観によって結論が左右されかねず、離婚の自由を不当に制 限しかねないとして、立法当初から批判がありました。ちなみに、民法改正要綱では、「(離婚原因があっても)離婚が配偶者又は子に著しい生活の困窮又は耐 えがたい苦痛をもたらすときは、離婚の請求を棄却することができるものとする」としています。