熟年離婚と財産分与
平成18年中の離婚件数は約257500組で、このうち同居35年以上の「熟年離婚」は4747組で前年同様の高い数字で推移しています(厚生労働 省「人口動態統計」)。こうした熟年離婚で問題になるのは、財産分与(相手に離婚原因がある場合には慰謝料も問題になるでしょうが)、特に年金と退職金で す。年金も退職金も、夫婦のお互いの協力があったからという考え方が導入され始め、従来の判例では、すでに退職したケース、あるいは退職間近のケースで退 職金や年金を妻にも認める例が出されていました。こうした、状況を背景に、平成16年の6月に離婚時年金分割制度が導入されました。
離婚時年金分割制度の内容は
離婚時年金分割とよく言われますが、正式にはり離婚時の厚生(共済)年金の分割です。したがって、国民年金(基礎年金)や厚生年金基金、確定給付企 業年金の分がこの制度により分割されるということはありません。さて、離婚時の厚生年金の分割制度ですが、これは平成19年4月と平成20年4月の2段階 に別れて施行され、少々複雑な内容です。
「平成19年4月施行」
①離婚期間中の厚生年金の保険料納付記録(夫婦の合計)を当事者間で分割する
②分割できるのは、施行日(平成19年4月)以降に成立した離婚ですが、施行日前の婚姻期間についての厚生年金保険料納付記録も分割を対象とすることができる
③離婚当事者は協議により按分割合について合意した上で、社会保険事務所に厚生年金の分割請求をする。当事者間で合意ができない場合には、離婚当事者の一方の請求で裁判手続きにより按分割合を定める
④按分割合の上限は50%とし、下限は分割を受ける側の分割前の持ち分にあたる割合
「平成20年4月施行」
平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間については、当事者のうち、その第3号被保険者期間を有していたほうからの請求により、第2号被保険者の厚生 年金の保険料納付記録を自動的に1/2に分割する。たとえば、平成20年の8月に離婚したとします。この場合、平成20年3月31日までの結婚期間につい ては、第3号被保険者期間に対応した厚生年金の保険料納付記録が自動的に1/2に分割されます