養育費の取立ては金額も少額なだけに困難な面がある
約束した養育費は債権です。どう支払わせるかは再建一般の取り立てと共通になります。ただし前述したように養育費は扶養請求ですから将来にわたっ て、額が変わることもあり得ます。多く変わることが多いでしょうが、少なくなる事例もあります。ただし変更には協議または家庭裁判所の審判(または調停) が必要です。 養育費の支払いは毎月払いとして定められることが多く、それが長期にわたる性質のものですから途中で滞ることが少なくありません。また離婚は貧困が大きい 原因となって起きることが多く、支払う側に経済力が乏しい事例が多いので、不払いが起こりがちです。その取立ては債権の取立てと同じとはいえ、ビジネスに 不慣れな一般の人、特に離婚したばかりの母親にとっては困難です。毎月の支払い額は少額で、大げさな手続きも事実上困難であり、しかもそれに生活を頼る場 合が多いのですから、滞りがちになると困ってしまいます。
家庭裁判所に申し立てて養育費の履行を確保する方法
そこで家事審判法と家事審判規則には特別の規定が定められてあります。
履行勧告
審判や家事調停で定められた義務の履行について、家庭裁判所は履行状況を調査し義務の履行を勧告することができます。裁判所の勧告ですからかなり効き目があります。
履行命令
義務の履行に怠りがあるときは、家庭裁判所は義務者の陳述を聞き、履行の命令をします。正当な理由がなく命令に従わないときは過料の制裁があります。
家庭裁判所への寄託
義務者の申し出があれば、権利者に代わって金銭の寄託を受けることができます。つまり、当事者同士の交信を避ける方法もあるのです。
家庭裁判所の寄託命令・調停
寄託を命じる審判があり、または寄託する調停が成立したときも同様です。
強制執行
審判や調停調書が判決と同様の効力を有しますから養育費の請求権により強制執行ができます。
差し押さえる財産もなく、支払い義務者が行方不明になる事件では、住民票の追跡や仕事関係の調査により、まず所在や勤務先を探すことが必要になります。勤務先が判明すれば給料等について継続的な強制執行ができます。