財産分与を決める前に財産の見極めをすることが先決
夫婦で子供もいない場合に、双方で離婚することが決まると、後は財産をどう分けるか、つまり財産分与の問題となります。以下では、ある夫婦の会話か ら、財産分与について解説します。山田さんは平均的なサラリーマンです。財産はありません。唯一の宝は愛妻の花子さんでしたが、残念ながらケンカして離婚 となりました。財産はないと言いましたが、会社の社宅制度が貧弱なためローンを組んでマンションを買ったのが10年前です。以後の10年間、山田さん夫婦 は家賃のつもりでせっせとローンの支払いをしてきましたが、最初のうちは利息の割合が大きくローン額はまだ大半が残っています。ただ、マンションのほかに も家具や自動車もあります。しかし財産価値は小さいものです。離婚となれば財産分与ということが起きます。そしてサラリーマンであれば、たいてい財産とい えばこんなものでしょう。「ねえ、財産分与をするつもりはあるの」と花子さんが言いました。「うん、今さら卑怯なことはしないよ」というのが山田さんの答 えでした。山田さんとしては財産分けを不当に逃げるつもりはありません。何といっても長年一緒に暮らしてきた相手です。とはいえ自分の将来もあり、全くの 無一文になってしまうのも不安です。それに花子さんも元気であり働くこともでき、また再婚も可能です。だとしても離婚したからといって悲惨な生活をするわ けではありません。
いくらぐらいが妥当な財産分与額かは当事者で決めるしかない
だから山田さんとしては法律的にみて至当な財産分与をしたいのです。至当な財産分与額はどのくらいでしょうか。「いくら出すつもり」「いくらったっ て、財産なんてほとんどないからなあ。マンションも売るに売れないし」「あら、売ったらいいじゃない。どうせ別れるんだもの」「今売ったらやすいぜ、ロー ンの始末もある」「それが未練よ。サッパリと売って、お金を二つに分けてよ」と、二人の主張は食い違います。しかし売る売らないよりも、財産の額を見極め るのが先です。財産にはプラスとマイナスがあります。山田さんの財産の主なものはマンションの時価からローンの残額を引いた額といってよいでしょう。これ によりいくら分配するのか、金額の見当がつきます。家具や自動車は大体の見積りとし、現物で分けてもよいでしょう。マンションは現物では分割できませんか ら、花子さんの主張のように処分して現金にするか、山田さんが別途、花子さんに対する支払い分を工面して支払ってもよいのです。この話しは、マンションの 資産となっているケースですが、不動産の値下げによりマイナスになっている場合もあります。この場合、マイナスを分割することも考えられます。