熟年夫婦、横暴という理由だけでは離婚できない

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高齢者離婚だからといって特別な離婚理由があるわけではない

高齢化社会を反映してか、熟年離婚とか定年離婚とかいわれている高齢者の離婚が、最近になり増加 しています。ちなみに、厚生労働省の人口動態統計によると、平成18年の同居期間20年以上の夫婦の 離婚件数は37786件にも上っています。長年にわたり夫婦として苦労してきたという事実、いたわりあ い慰め合って過ごす老後、最後を見取ってあげようという思いやりなどというものは、今や過去のも のになりつつあるのでしょうか。それはともかく、このような熟年世代の離婚申立件数が増えてきた のは、夫や子供のために尽くすという従来の女性の生き方に疑問を抱きはじめ、残りの人生を自分に 正直に過ごしたい、自分のための生きがいを求めて自由に暮らしたいという口的を持つ女性が多くな ったからだと言われています。中高年者の離婚の申立てだからといって、離婚理由に特別なものがあ るわけではありません。これまで述べてきた、配偶者の不貞行為、配偶者の悪意の遺棄、3年以上の配 偶者の生死不明、強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき、それと婚姻を継続しがたい重大な 事由があるときに該当するかどうかが問題になるだけです。

離婚が認められるためには法定離婚原因が必要

では、判例に現れた具体的な高齢者離婚のケースをみてみましょう。 結婚生活30年、二人の子供は 独立し別に生活、家業の自動車修理業のことで口論となり、妻は家を出て長男のところに身を寄せ、3 年後に離婚訴訟に踏み切った例があります。夫は真面口で仕事一筋、反面、家族のありかたを顧みる ことが少なく、社会性や柔軟性がなく、口やかましく、家族をどなったり、暴力をふるったこともあ った。妻は、破綻の原因は夫の専制君主的な態度にあり、今後は日分に正直に心安らかに過ごしたい と訴訟を起こしたというもののです。 裁判所は、夫婦関係が破綻にひんしていることは認めました が、妻に帰ってきてほしいと懇願している夫が、反省すべき点を十分に反省すれば、婚姻生活の継続 は可能と考えられるから、二人してじっくり腰を据えて真剣に気長に話し合うことを勧め、離婚請求 を棄却しました(なお、妻は控訴しましたが、和解により協議離婚が成立しました)。夫が定年退職 し、1日中家にいて妻に命令しているワンマン亭主。たまには妻に手を上げたりすることもあります。 妻はこのような苦痛から逃れ、残りの人生をのびのび生きたいとして離婚を求めた事件で、では離婚 が認められた(横浜地裁・平成11年7月30日判決)のですが、控訴審の東京高裁で逆転敗訴しています (平成13年1月18日判決)。暴力は立派な離婚原因ですが、長い期間申、傷も残らないほどに手を上げ ただけでは、離婚原因としては弱いということでしょう。このように、高齢者離婚の請求では、若年 者離婚の場合とは違って、裁判所も慎重な態度で臨んでいるようです。