争うときの財産の保全と決まったことを実行させる法

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相手が財産を処分してしまうのをストップする対策

離婚当事者の中には、離婚はしてもいいが離婚に伴う金銭は支払たくないという人がいます。そのため、調停がまとまらず審判に移行しそうになると、自 分の財産の名義を変えたり、処分したりするケースも皆無ではありません。また、財産分与請求をいきなり審判で請求する場合も同様です。そこで家庭裁判所で は、審判前に仮差押えや仮処分、その他必要な保全処分を命ずる制度を設けて(家事審判法を5条の3)、財産分与や養育費を請求する人たちの保護を図ってい ます。審判前の保全処分の申立てをする場合には、申立てをする者は、保全処分の内容、保全処分を求める事由を明らかにし、保全処分の必要なことを疎明(証 明よりも簡単でよい)しなければなりません。

調停や審判で決まった内容を実行させるための対策

離婚した当事者は、離婚後はできることなら顔を合わせたくないというのが普通だと思います。また、金銭の支払いの都度、顔を合わせることによって、 復縁を迫ったり、暴力を振るうなどの不慮の事態も招かないとも限りません。そこで家庭裁判所では、調停や審判で決まった金銭の支払いについて「寄託制度」 を設けています。これは家庭裁判所が、支払義務者からの支払金を預かって保管し、受取人に通知して支払う制度です。この制度を利用するには、当事者の同意 がなければ利用できません。財産分与や慰謝料が分割払いのとき、あるいは毎月の養育費の支払いが滞納するというのは、よく起こりがちです。これも調停や審 判で、その金銭の支払いが決まったという場合に利用できる制度に、「履行勧告」と「履行命令」の制度があります。履行勧告は、支払いを受けられなくなった 者からの申立てがあると、家庭裁判所が履行状況を調査して、支払義務者に履行の勧告をしてくれるものです。法律上の強制力はありませんが、裁判所からの督 促という効果からか、勧告があると約55%の人が何らかの支払いに応じています。履行勧告があっても履行が行われない場合には、履行命令の申立てができま す。履行命令の申立てがあると、家庭裁判所は相当の期限を定めて、義務の履行の命令をします。履行勧告は費用はかかりませんが、履行命令の申立手数料は 500円です。履行命令に従わない義務者には、10万円以下の過料に処せられる制裁があります。ただし、履行命令が出される例は少ないようです。

寄託制度

離婚後は相手の顔も見たくない、接触はしたくないという人も多いものです。そこで養育費など離婚後の金銭のやり取りについて家庭裁判所が支払う側か らお金を預かり、受け取る側に支払うという制度が、寄託制度です。この制度を利用できるのは、調停・審判で決まった金銭で、それを決めた家庭裁判所に申し 立てます。

離婚前に財産を確保しておく方法は

専業主婦であった妻が、離婚後すぐに困るのが「お金」です。一方、夫の側は分かれる妻に金は渡したくないとばかりに、財産隠しに走ることがありま す。妻は離婚調停中であれば「調停前の仮の措置」を申し立てることができます。ただ、民事執行法の仮処分のような執行力がないので、相手が信頼できないと 効果は上がりません。また、審判事件が継続している場合には「審判前の保全処分」という手続きがあります。ただ、離婚請求事件で審判が継続する例は稀で す。そこで、結局は民事執行法による仮差押えや仮処分を利用することになります。