親権者になるための基準はあるのか

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大半は母親が親権者になる

「子はかすがい」「縁の切れ目は子でつなぐ」ということわざもあるように、夫婦間の愛情が冷めてしまっても、子どもかわいさに離婚を思いとどまっているという夫婦も少なくありません。このような夫婦がいざ離婚するとなった場合、どちらが子どもをひきとるかでもめるという事態に発展する可能性が高いと思います。このように、子どもの親権をめぐって争いが生じた場合、調停や審判、もしくは裁判(訴訟)など、法的な手続きによって親権者が決定されます。過去に家庭裁判所でとり扱われたケースを見るかぎりにおいては、母親が親権者や監護者になる場合が、圧倒的に多くなっています。これは決して、「男親が親権者としてふさわしくない」ということではなく、実際に子どもの世話をする、子どもの教育環境をととのえるなどの点から検討した結果、「母親といっしょにいたほうが、子どもにとっては生活しやすい環境である」と判断されることが多いからといえそうです。ましてや子どもが義務教育にも達していない幼児の場合は、とくにそう判断されることは多いでしょう。しかし、場合によっては、父親が親権者となることもあります。たとえば、父親も母親も収入的に対等の仕事をもっていて、子どもを育てる環境も両者同じく問題ないが、母親の側に離婚の原因をつくった責任があるようなケースでは、母親は親権者としてふさわしくないと判断され、父親が親権者になるということもあります。

親権者の決定基準となるポイント

ここで紹介する決定基準とは、あくまで裁判離婚の場合の基準ですが、一般的な協議離婚の場合も、同様の基準を応用できると思います。

① 健康状態が良好であること

当然のことながら、子どもを育てていくためには、心身ともに良好な健康状態であることが不可欠です。病弱であることはもちろん、蹄僻など精神的に不安定だったり、アルコール、薬物中毒の可能性があるような場合も、十分に子どもの養育をすることができないと判断され、親権者としては不適格ということになります。住所不定の放浪生活を送るような人も、同様に判断されます。

② 子どもと接する時間がとれること

子どもを教育し、食べさせていけるだけの収入を得なければならないのは、父親も母親も基本的には同じ条件ですが、たとえば、「妻の実家で金銭的な援助があり、フルタイムではたらかなくてもやっていけるので、その分子どもと接する時間が夫よりも多くとれる」というような場合は、母親側が親権者として適当とされる可能性が高いでしょう。

③ 子どもの年齢および子ども自身の事情も考慮する

裁判所の調停や審判では、「10歳くらいまでは、子どもは母親とのスキンシップが重要である」という見方をよりどころとして、判断をすることが少なくないようです。これに対し、「15歳以上になれば、物事に対して自分で意思決定する能力がそなわる」と判断され、子ども自身の意思や希望が尊重されるようになります。とはいうものの、子どもにとっては、両親が離婚するという大へんショッキングな出来事の渦中にあるわけですから、年齢だけをとって「もう大人だ」などと安易にかまえず、子どもの情緒を十分に考慮した上で、その意思や希望を受けとめることが大切です。また、住む場所や学校などががらりと変わるといった急激な環境変化も、子どもにとっては大きな心の痛手になります。家族の引っ越しで変化が起こるのとは事情がちがいますから、こうしたことも決定基準の一つとして考慮に入れられます。

④ 経済的な事情は大きな問題ではない

子どもの幸せはお金ではかることはできません。ですから、経済的に豊かであることは、かならずしも親権者決定の大きな基準とはならないと考えられます。

⑤ 離婚に際しての責任について

他国の例を見ると、どちらかの不貞が理由で離婚するような場合、不貞をはたらいたほうの親は親権者にも監護者にもなれないことが、はっきりと法律で定められているところもあるようですが、日本ではこのような法律はありません。裁判例を見ても、あくまで「子どもの幸せ」を優先基準として判断され、有責かどうかが決定的な基準にはならないようです。しかし、すでに述べたように、あらゆる条件が対等で、両者が親権を主張した場合は、有責配偶者が不利になることも十分ありえます。

⑥「監護補助者」となる親戚やあてがあるか

父母とも仕事をもっている場合、子どもの養育のための「監護補助者」が必要となります。監護補助者は、祖父母などの親族がなることもありますが、監護補助者自身の心身状況や人格、および育児経験などが重要ポイントになります。監護補助者は、かならずしも親族でなければならないわけではありません。適切であれば、乳幼児保育施設を監護補助者として立てることも可能です。