暴力の程度にもよるが夫婦問といえども暴力は許されない
アルコールが入ると人が変わる人がいます。笑い上戸になる人もいれば、泣き上戸になる人もいます 。ところが、同じ変わるにしても、飲むにつれて暴力的になる人もいます。いわゆる酒乱と呼ばれる 人がそうです。えてして、酒乱と呼ばれる人は、普段はおとなしく、借りてきた猫みたいなのに、一 度アルコールが入ると乱暴になるようです。アルコールが入ろうと、入るまいと、夫婦の間でも暴力 は許されるものではありません。裁判所も夫婦間の暴力に対しては強い姿勢で臨んでいます。ちなみ に、家庭裁判所の離婚原因別の統計を見ても、暴力を原因とする離婚の申立ては、毎年上位を占めて います。 一般には夫の暴力に耐えられないというケースが多いでしょうが、中には妻の暴力が離婚 原因とされるケースもあります。戦前に適用されていた旧民法では、配偶者による「同居に耐えない 虐待」は、離婚原因になると規定していましたが、今の民法にはこのような規定はありません。しか し、家庭内でこのような暴力が振るわれるような場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当 たるとして、裁判所は離婚を認めています。
暴力を振るわれた妻からの離婚晴求を認めた判例は多い
暴力を振るう夫に対して、妻だというだけで我慢を求めるのは筋違いです。つぎに、酒乱とは限りま せんが、暴力を振るう夫に対して、離婚請求をした事件を紹介しておきましょう。 精神的に衰弱し ていた妻に対して、傷害を与えたのは一回だけあったが、それが相手に対して将来の暴行を予想させ 恐怖心を抱かせるような状況で離婚請求をした事件について、離婚を認めた裁判例もあります。また 、夜間の仕事に従事する夫が、日中でも性交渉を要求するのに対して、潔癖症の妻がこれを拒絶した ところ、目的を遂げようとして、夫が殴る蹴る、家財道具を投げつけるなどの暴力を振るうことがし ばしばあったというケースについて、裁判所は妻からの離婚を認めています。わが国では、あれは酒 の上での席だからなどと、酒飲みに対して甘い風潮があります。しかし、酒が入っていようといまい と、夫婦問での暴力が許されていいわけがありません。暴力に対しては、毅然とした態度で望み、改 善の見込みがなければ、離婚もやむなしと考えます。