親権の争いは調停から審判に移行する

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親権について合意しない限り調停では親権者を決められない

水商売をしている妻に親権を渡したくないということで、離婚については合意ができているのに、争いになった事件があります。もともと夫は、妻が水商売をしていることに不満をもっていました。いずれにせよ水商売だから不真面目とは限らず、したがって親権者になれないとか、ふさわしくないとは言えません。しかし、そのような言い分が調停で通るのだろうか、ということでしたら、調停手続きは当事者双方の合意があって始めて調停が成立するものですから、これに双方が同意しない限りは、調停は成立しませんし、一応は親権者をどちらにするのかの取り決めは生じないことになります。ただし、親権者の指定は家事審判法による審判事項です。調停が不成立に終われば、調停申立ての取下げがない限り、手続きは自動的に審判に移行します。夫が調停を申し立てたのであれば夫の方からは取り下げることができますが、妻の方からも審判の申し立てはできますから、審判になることを妨げることはできません。審判では家庭裁判所が職権で手続きを進めます。まず、家庭裁判所調査官の事実調査があり、子どもめぐる家庭環境が調べられます。当事者に対する審理も行われます。こうして審理があった後、審判が下されます。家庭裁判所の職権で親権者となる者の指定が行われますから、双方の思惑とは関係なく、事案によっては水商売の妻に親権を渡すことになるかもしれません。

親権は子どもの利益、子どもの福祉を中心に決められる

親権は、親の気持ちを満足させるための権利ではありません。子どもを保護するための制度であり、親権者の子どものためを考慮して定められるものです。親権者を定める審判では、その観点からの調査があり、その観点から一切の事情が斟酌されます。一般的には子どもが幼い場合は母親が育てる方がよいとされることが少なくありません。相手が水商売であっても子どもの養育ができる環境にあり、半面、夫の方は人手その他で子どもの養育に支障があるというような場合には、妻が親権者(または監護者)に指定されることもあるでしょう。ただし、親権者の指定は離婚が前提となります。離婚がなければ親権者の指定もありません。心配なら離婚を止めればよいことになります。ただし、その場合は妻もまた親権者です。

離婚後も共同して親権を行使したいが

民法は、離婚に際して、夫婦のどちらか一方を親権者として決めなければ、離婚届は受け付けられないとしています。すなわち、離婚後は共同して親権を行使することを認めていません。喧嘩別れではないので、離婚後も子どもの養育や教育に積極的にかかわっていきたいという場合、夫婦の一方が親権者になり、監護は共同して行う「共同監護」をとることは可能です。アメリカでは、離婚後の子どもの養育について、子どもの利益を最優先に考え、共同監護を原則とする方向で立法化が進められてきています。わが国でも離婚後も共同監護をしようとする人も出てきています。