調停なしに審判申立てができる場合もある

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乙類に該当するものであれば直接審判の申立てが可能

審判事項は甲類と乙類の二つに分けられています。甲類とされるものは審判申立てだけができ、調停申立てはできない種類のものです。したがって、当 然、調停を経ないで審判の申立てができ、審判だけが行われます。甲類は、失踪宣告、成年後見人の選任、子の氏の変更など当事者の合意にゆだねることが適切 でなく、もっぱら家庭裁判所の判断によるべきものとされる事件だからです。乙類とされるものは、当事者の合意にゆだねて差し支えない性質のもので、これは 審判と調停と、両方の手続きができるものです。夫婦の協力扶助、子の監護、婚姻費用の分担、離婚に際しての財産分与などがあります。このように、乙類に属 するものは、審判の対象にもなり、調停の対象にもなるのですが、調停を経ないで、いきなり審判の申立てをすることもできます。つまり「調停前置主義」の制 度は、審判については定められていないのです。離婚や離婚に関する事件がすべて審判事項になるのではありません。例えば、離婚や離婚に伴う慰謝料請求など は、審判事項ではなく、家庭裁判所等の調停・訴訟手続きによることになっています。したがって、家庭裁判所へ審判申立てをすることはできません。

離婚や慰謝料請求については事前に調停をすることが必要

離婚や離婚に伴う慰謝料などの事件は、家庭に関する事件として家事調停が行われます(一般調停事件)。これらの争いについては家庭裁判所で当事者の 話し合いの機会を与えるため、調停前置主義がとられています。原則として、まず家庭裁判所へ調停申立てをしなければなりません。離婚のほか、扶養(養育費 など)、離婚の遺留分減殺請求、その他の人事、家庭に関する紛争もこれに入ります。ところが甲類審判事項は、当事者の話し合いによる解決になじまない事件 ですから、わざわざ話し合いの機会を作る必要はなく、したがって調停前置主義がなく、いきなり審判の申立てが許されるのです。ただし、乙類審判事項につい ては、申立てを受けた家庭裁判所は、その事件を(調停の申立てがなくても)職権で、いつでも調停手続きに回すことができます。これを調停に付する「付調 停」といいます。調停に付されれば、一応は普通の調停手続きとなります。合意があれば調停成立となり調停調書が作成され、事件は終了します。調停が不成立 となれば事件は審判手続きに戻ります。

調停前置主義

過程に関する事件は、初めから傍聴人たちが見ている公開の法廷で、当事者を原告と被告として対立させて争わせると、かえって紛争が激化したりする恐 れがあるので非公開の家庭裁判所の調停室で調停委員を交え話し合うかたちで調停を進め、まとまらない場合に初めて訴訟で解決すべきものとしています。この 制度を、「調停前置主義」といいます。

調停が難航しているので審判を出してもらいたい

離婚調停が申し立てられ、何度か調停を重ねたにもかかわらず、当事者のどちらかが一方的な意見に固執したり、調停の詰めの段階で出頭しないため調停 が成立する見込みがないとき、家庭裁判所は、相当と認めるときには、調停委員の意見を聞いて、当事者の意思に反しない限度で、職権によって離婚やその他の 処分(財産分与、慰謝料、親権の決定など)を行うことができます。これが調停に代わる審判です。ただ、この制度の弱点は審判を受けた当事者または利害関係 者が2週間以内に異議申立てをすると、理由の如何を問わず、即座に審判の効力がなくなってしまうことです。