調停条項を守らないときは強制執行ができる

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調停条項を相手が守らなければ調停調書により強制執行ができる

調停調書(したがって調停条項)には判決と同じ効力があります。不履行に対しては履行の調査・勧告の申立て、履行命令の申立ておよび強制執行ができます。調停条項の中には、「相手方は申立人に対して金◯◯円を支払え」とか、「・・・金◯◯円を支払うこと」というように、物質的なハッキリした支払事項もあります。このような事項についての強制執行は最も原則的なもので、弁護士に依頼すればやってくれますし、慣れれば自分でもできます(ただし1文無しで無収入の相手からは取るよしもありませんが)。強制執行(差押えと競売)の対象となるのは、相手名義(または所有)の財産です。動産(家財道具や絵画、宝石類、ゴルフ道具、有価証券、自動車など)、不動産(土地建物、マンションもこれに入る)、債権(銀行預金、郵便貯金、貸金、売掛金、物の返還請求権など)があります。債権額が小さい場合は、家財道具など動産の強制執行が適切かと思いますが、裁判所の執行官に面会して動産のある現場へ行って差し押さえてもらうことになりますから、意外と面倒でもあります。むしろ、手続き的に容易なのは債権(給料など)に対する強制執行でしょう。これは書類だけで強制執行ができ、競売の手数が要りません。司法書士に頼めば比較的に少ない手数料で書類を作成してもらえます。「職場へ電話をしないこと」というようなことは、性質上、直接強制ができません。このような事項に対しては間接強制(違反すれば金銭を支払わせる)という強制執行方法があります。

まず家庭裁判所に履行の勧告を申立てる

調停調書で決定された条項がきちんと果たされない場合は、裁判所による履行勧告・履行命令の申立てが可能です。これらの申立てをしても履行されない場合には、強制執行の措置をとります。

履行勧告

履行の勧告を申し立てるには、「履行勧告の申出書」に調停調書謄本を添付して、調停が行なわれた裁判所に申し出ます。この際の費用は不要です。書類が提出されると、家庭裁判所は調停で定められた条項が正しく履行されているかどうか調査し、もし、正当な理由もなく履行されていない場合には、義務者に対して条項の義務を履行するように勧告し
ます。この勧告には法的な効力はないものの、権利者本人が直接相手に催促するよりは効果的なようです。

1 履行命令

調査・勧告にもかかわらず不履行を続ける場合は、義務を実行するように命令されます。履行命令も勧告同様に当事者の「履行命令の申立書」によって行なわれます。必要書類や申し立てる裁判所は、勧告の場合と同様です。

2 寄託

養育費や慰謝料など、当事者どうしが直接金銭のやりとりをするのが不都合であるような場合のために設けられたのが、この寄託という方法です。寄託では、支払義務者が家庭裁判所に対して決められた額を支払うと、家庭裁判所がこれを保管して権利者に通知します。その後権利者が裁判所に対して請求書を提出すれば、保管されていた金銭は権利者に支払われる、というシステムになっています。ただし寄託の制度を利用することできるのは、①金銭の支払いを家庭裁判所に寄託して行なうことを命ずる審判が効力を生じたとき、②金銭の支払いを家庭裁判所に寄託して行なう旨の調停が成立したとき、③調停で定められた金銭の支払義務の履行について、その金銭の寄託を相当であると家事審判官が認めたときだけです。

3 強制執行

強制執行とは、国家機関である裁判所が権利者の権利内容を強制的に実現してくれる手続です。強制執行の対象となるのは、相手名義(または所有)の財産です。具体的には、次のようなものがあげられます。

  • 動産(家財道具、有価証券、自動車、絵画やゴルフ道具など)
  • 不動産(土地建物、マンションなど)
  • 債権(預貯金、貸金、売掛金、電話加入権など)

請求金額が小さい場合は、家財道具など動産の強制執行が適切ですが、裁判所の執行官に面会して動産のある現場へ行って差し押さえてもらうことになるので、実際に行なうのは少々手間がかかります。いちばん簡単なのは相手の債権に対する強制執行です。強制執行の手続きは、自分でできるものもありますが、めんどうな場合には弁護士に依頼することをおすすめします。強制執行をするためには費用もかかりますし、手続的も面倒です。できれば手続きの容易な履行勧告・履行命令の制度だけで解決するのがベストでしょう。

給与等の差押えが容易になった

平成15年の民事執行法の改正によって、子どもの養育費や夫婦間の婚姻費用分担金などの場合で、毎月の分割払いの約束がある場合に、不履行があるときは、不履行の部分だけではなく、将来の部分についても給料等の差押えができ、また給料の1/2まで差押えができるようになりました。

調停ではお金の問題はどう取り扱われるか

調停では、離婚するかどうかだけではなく、お金の問題、すなわち財産分与、慰謝料、子どもの養育費についても、離婚調停申立書に記載しておけば、取り上げてもらえます。申立書には、具体的に請求する(あるいは支払う)金額を書く欄がありますが、具体的な金額がわからない場合には、「相当額」と記載しておけばよいでしょう。また、現在別居中で、まだ離婚前だから生活費を支払ってほしいという場合には、調停の際に「調停前の仮の措置」という手続きがあります。また、離婚調停とは別に「婚姻費用分担調停」を申し立てることもできます。

相手に守ってもらいたい事柄は調停調書に必ず記載してもらう

「調停で決まったこと」というのは調停調書に記載されたことです。調停手続きを重ねる中で、いろいろのことを言い、受け答えがあったとしても、最後の結論である調停調書に記載がないことは、調停で決まったこととは言えません。調停成立のときに調停内容に注意するように述べたのはそのことです。調停成立の席で、「あなた、職場へは絶対に電話してこないでよ」「うん、わかった」というような会話があったとしても、調停条項に「相手方は申立人の職場へ電話をしないこと」という記載がない場合は、調停の席での私人間の約束であり、調停で決まったこととは言えないのです。この点を間違えず、大事なことは調停条項に入れてもらうよう頑張るべきです。