ビルの一室を事務所として借りる場合の賃貸借契約公正証書

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賃貸借契約公正証書

ビルの一室の賃貸借もその部屋に独立性があるので、借地借家法の適用を受けます。ですから、賃貸人側による期間満了の際の更新拒絶や期間の定めのない契約の場合の解約申入れには、自己使用の必要性など、正当な理由が必要とされます。賃借人には建物使用を継続する強い必要性があるのが通常ですから、賃貸人側にこの正当事由が認められる場合はかなり限られてきます。ただ、賃貸人は、正当事由がない場合にも、賃借人に対し立退料を支払うことで解約する事ができます。

事務所賃貸借契約公正証書

本公証人は、当事者の嘱託により、その法律行為に関する陳述の趣旨を縁取し、この証書を作成する。

賃貸人株式会社○○不動産(以下「甲」という)と賃借人株式
会社△△商事(以下「乙」という)は、甲の所有にかかる後記の
建物(以下「本件建物」という)の賃貸借に関し、次のとおり契
約する。
第1条(契約締結の目的)甲は、乙に対し、本件建物を次条以下
の条件で賃貸し、乙はこれを賃借することを、その目的とする。
第2条(使用目的の明示)乙は、本件建物を営業用事務所として
のみ使用することとする。
2 乙は、前条以外のその他の目的に使用してはならない。
3 乙は、本件建物を現状のまま使用するものとする。事前に甲
の、書面による許可を得た場合を除き、本件建物に造作の設置、
その他の工作を加えてはならない。
4 乙が前項に基づき、造作の設置、その他の工作を施した場合
には、乙は、賃貸借終了の時点において、自己の費用をもって
本件建物を原状に復しなければならない。
5 前項の事由によって、建物に損害が及んだ場合には、乙は、
甲に対し、その損害を賠償しなければならない。
第3条(契約期間)契約期間は、平成○○年○月○日から平成○
○年○月○日までの2年間とする。
2 契約の更新は、期間満了3か月前に乙の申し出において、こ
れを行うことができる。契約を更新した場合において、その期
間は2年とする。
第4条(賃料とその支払方法)賃料は月額○○万円とする。
2 賃料の支払いは、毎月末日までにその翌月分を甲の指定する
銀行口座に振り込んで支払うものとする。なお、甲の住所地に
持参することを妨げない。
3 1か月に満たない日数については日割計算として算出する。
第5条(賃料の増減)甲または乙は、物価、公租公課、近隣建物
賃料の変動、その他の予期しがたい事由により、当該賃料が不
適当となった場合には、賃料の増減を請求することができる。
第6条(光熱費等の負担の所在)乙は、第4条の賃料の他に、以
下の使用に対して生じた経費を自己負担によって、支払うこと
とする。
① 電気
② 水道
③ ガス料金
④ 衛生清掃費
⑤ 冷暖房費
⑥ その他本件建物の使用
第7条(保証金)甲および乙は、乙が、甲に対し、保証金として
金○○○万円を、本契約成立と同時に甲に預け入れたことをこ
こに確認する。
2 当該保証金には利息は付さないものとする。
3 前項の保証金は、本件契約が終了し、本件建物が甲に明け渡
された時点で、金○○万円を償却した上で、残額を甲から乙に
返還するものとする。償還の方法は、乙のあらかじめ指定した
銀行口座に甲が送金する方法でこれを行う。
4 乙が甲に対する債務を履行しない場合には、甲は保証金を
もってこの弁済に充当することとする。
第8条(禁止事項)乙は、以下の事由につき、これを禁止する。
下記事由の一に該当した場合で甲に損害が生じた場合には、乙
は相当額の賠償を行うこととする。
① 本件建物を第2条に定めた目的以外の使用に供すること
② 賃借権を第三者に譲渡すること
③ 本件建物を第三者に転貸することまたは第三者の使用に供
すること
第9条(修繕費の負担)甲は、本件建物の維持に必要な修繕を行
う義務を負う。
2 乙は、建具、造作、給排水施設、照明器具、壁等、日常の使
用によって損耗する部分、その他、建造物の維持につき、重要
な部分の滅失、毀損につき、修理費用を負担する。
3 費用の負担につき疑義のあるときは、甲乙協議の上、決定す
る。
第10条(契約の解除)甲は、乙に次の各号の一に該当する事由が
発生したときは、何らの催告なしに、本契約を解除することが
できる。
① 賃料の支払いを3か月以上怠ったとき
② 第8条に違反したとき
③ その他本契約の条項に違反し、当事者間の信頼を著しく害
したとき
2 上記内容に反した場合、乙は甲に対し、相当額の損害の賠償
を負うこととする。
第11条(明渡しの条件)本契約が終了したときは、乙は直ちに本
件建物を原状に復し、速やかに甲に明け渡すこととする。
2 本契約の終了に際し、乙は、甲に対し、移転料、立退科、そ
の他これに類するいかなる名目の金銭も請求してはならない。
第12条(損害賠償)乙は、乙の従業員・取引先、その他乙の営業
活動に関連して本件建物に立ち入った者の故意または過失によ
りて、甲に損害を与えたときは、その損害の全額につき、甲に
対して賠償しなければならない。
第13条(解約申入れ)乙が契約期間中に本契約を解除しようとす
るときは、乙はその3か月前までに甲に対しその旨を書面にて、
通知するものとする。ただし、乙が賃料の3か月分を即時に支
払うときは、即時に本契約を解除することができるものとする。
第14条(合意管轄)本契約につき、当事者の権利関係に紛争が生
じた場合には、甲の住所地の管轄地方裁判所を第一審裁判所と
することを、甲乙、双方が合意する。
第15条(双方協議)当契約条項に定めなき事由が生じた場合には、
甲乙双方が協議の上、別途、これを定めることとする。
以上
本旨外要件
住 所  東京都○○区○○町○丁目○番○号
職 業  会社員
貸 主  ○○○○ 印
昭和○年○月○日生
上記の者は運転免許証を提出させてその人違いでないことを証明させた。
住 所  東京都○○区○○町○丁目○番○号
職 業  会社員
借 主  ×××× 印
昭和○年○月○日生
上記の者は印鑑証明書を提出させてその人達いでないことを証明させた。
上記列席者に閲覧させたところ、各自その内容の正確なことを承認し、下記に署名・押印する。
○○○○ 印
×××× 印
この証書は、平成拾七年○月○日、本公証役場において作成し、下記に署名・押印する。
東京都○○区○○町○丁目○番○号
東京法務局所属
公証人  ○○○○ 印


この正本は、平成拾七年○月○日、貸主○○○○の請求により下記本職の役場において作成した。
東京法務局所属
公証人  ○○○○ 印

 

高額な保証金が要求される場合もある

事務所・店舗の賃貸借の場合には、保証金が差し入れられるのが通常です。保証金には、営業を許可するという意味、賃借権を譲渡することができる権利などの意味をもつこともありますが、敷金と同じように、家賃を担保する目的をもつことがあります。なお、保証金は敷金に似ていますが、新しいビルなどでは建築費の支払に振り向けるため、普通の敷金とは比較にならないほど多額で一種の無利息借入金の作用を営んでいるようです。定期借家権を盛りこんだ契約を行うと、一定の間の借主の入居が見込め、賃貸事業の将来の収益が予測できるようになります。立退料は不要、借主の都合による解約などにも事前に対応できる、など貸主にとってのメリットは大きいものがあります。