動産譲渡担保契約公正証書

動産譲渡担保契約とは

債権者にも債務者にも便利な担保権は抵当権なのですが、その規制は法律で厳格に定められています。そこで、抵当権の利便性をいかしながらも、もう少し制約の緩やかな担保の手段が取引の世界では要請されてきました。そこから生まれたのが、譲渡担保という担保方法です。これは、担保目的物の所有権を債権者に移転して、それを債務者が引き続き借りておくという形のものです。譲渡担保は、工場に備えつけの機械や、倉庫に保管してある在庫商品など、担保化のための明確な規定がない財産を担保にとる場合に、広く利用されています。

動産譲渡担保契約公正証書

本公証人は、当事者の嘱託により、その法律行為に関する陳述の趣旨を縁取し、この証書を作成する。

債権者○○産業株式会社(以下「甲」という)と債務者△△金
属有限会社(以下「乙」という)は、双方の金銭消費貸借契約、
および動産譲渡担保権の設定に関し、次のとおり契約した。
第1条(本契約の目的)本契約は、債権者を甲とし、債務者を乙
とする、金○○○○円の消費貸借契約およびそれに付随する動
産譲渡担保設定契約をその目的とする。
第2条(金銭消費貸借契約の内容)甲は、乙に対し、本日から、
下記条件で、金○○○○円を貸付け、乙はこれを借受け、金員
を受領した。

弁済期    平成○○年○月○日
利 息    年率○パーセント
遅延損害金  年率○パーセント
第3条(譲渡担保権の設定と対抗要件)乙は、甲に対し、前条債
務を担保するため、下記に表示した動産(以下「本件動産」と
いう)の所有権を甲に譲渡し、かつ、占有改定の方法により本
件動産を引渡した。

品名    ○○○○
数 量   ○○○○
製造番号  ○○○○
製造年月日 平成○○年○月○日

2 乙は、甲が指示するところに基づいて、本件動産に譲渡担保
設定が了知しうる標識を貼付する等、明示をしなければならな
い。方法は別途、甲乙で協議の上、これを行う。
第4条(善管注意義務)乙は、善良なる管理者の注意をもって本
件動産を保管することを要す。
2 乙は、事前に甲の書面による承諾を得た場合を除き、下記行
為の一切を禁止する。
① 本件動産の第三者への譲渡または貸与
② 本件動産の第三者への担保提供その他の処分行為
③ 本件動産の使用、占有移転その他の事実行為等、甲の譲渡
担保権に損害をおよぼすおそれのある一切の行為
第5条(使用貸借とその解除)甲は、乙に対し、第1条に指定し
た弁済期に至るまで、利益をあげるため、本件動産をその用法
に従い、無償で使用する権限を与える。
2 甲は、乙が下記事由に該当した場合には、前項の使用貸借契
約を何らの通知催告なくして、直ちに解除することができる。
① 使用貸借権の全部または一部を第三者に譲渡もしくは転貸
した場合
② 本件動産に関し善良なる管理者としての注意義務に違反し
た場合
第6条(期限の利益喪失)乙が下記各号の一に該当したときは、
乙は甲からの催告がなくとも当然に全債務につき期限の利益を
失い、かつ、甲は直ちに本件譲渡担保権を実行することができ
ることとする。
① 本契約に違反したとき
② 自ら振り出し、または裏書した手形または小切手が1通で
も不渡りを出したとき
③ 営業停止等、行政処分を受けたとき
④ 公租公課の滞納処分を受けたとき
⑤ 自らの債務不履行を原因とした差押、仮差押、仮処分等を
受けたとき
⑥ 破産、民事再生手続または会社更生等、債務整理の申立を
なし、またはこれらの申立が第三者からなされたとき
⑦ 解散、会社分割、合併または営業の全部または重要な一部
の譲渡を決議したとき
⑧ 財産状態の悪化、またはその恐れがあると認められる相当
の事由があるとき
第7条(譲渡担保権の実行)乙が第1条の債務の履行を遅滞した
場合は、甲は、任意に本件動産を第三者に売却し、その売却金
を同債務の弁済に充当することができる。
2 前項の場合においては、甲は乙に対し、譲渡担保権を実行す
る旨の通知を書面にてなすことを要する。
3 前項の場合、換価代金が債務額を超過するときは、甲は直ち
にその超過額を乙に支払う。
4 前項の支払方法は別途、これを定める。
第8条(受戻権)乙は、甲から、前条第2項の譲渡担保権実行の
通知を受けるまで、債務の全額を支払うことで、本件動産を受
け戻すことができる。
以上
本旨外要件
住 所  東京都○○区○○町○丁目○番○号
職 業  会社員
貸 主  ○○○○ 印
昭和○年○月○日生
上記の者は運転免許証を提出させてその人違いでないことを証明させた。
住 所  東京都○○区○○町○丁目○番○号
職 業  会社員
借 主  ×××× 印
昭和○年○月○日生
上記の者は印鑑証明書を提出させてその人達いでないことを証明させた。
上記列席者に閲覧させたところ、各自その内容の正確なことを承認し、下記に署名・押印する。
○○○○ 印
×××× 印
この証書は、平成拾七年○月○日、本公証役場において作成し、下記に署名・押印する。
東京都○○区○○町○丁目○番○号
東京法務局所属
公証人  ○○○○ 印


この正本は、平成拾七年○月○日、貸主○○○○の請求により下記本職の役場において作成した。
東京法務局所属
公証人  ○○○○ 印

ネームプレート等による公示が必要になる

譲渡担保の対抗要件はちょっと面倒です。質権のように手元に引き取るものではないので、表面からは担保が設定されているかどうかわかりません。そのため、ネームプレート等を貼って、第三者から見ても債権者の所有物であることがわかるように表示する必要があります。譲渡担保権については明文の規定はないのですが、期限まで債務を弁済できないときは、所有権は完全に債権者のものとなります。その実行形態としては、当該目的物の所有権を譲渡担保権者が確定的に所有権を取得する方法による場合(帰属清算型)と、当該目的物を譲渡担保権者が第三者に売却しその代金をもって弁済に充当する場合(処分清算型)とがあります。いずれの場合にも、目的物の価額を被担保債権額が下回る場合には、譲渡担保権者は設定者にその差額を支払って清算しなければなりません。文例は処分清算型によるものです。

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