贈与契約の公正証書の作り方

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贈与契約とは何か

トラック運転手の夫と賃貸マンションに住んでいたSは、かねがね一戸建てに住みたいと思っていま した。そんなとき、Sの遠縁にあたるTが海外に転勤することになりました。Tは「飼っている2匹 の犬の面倒をみてくれるなら、持ち家をくれる」といいます。ただ、[犬の面倒をみられないような らば家は返してもらうということを公正証書にしておきたい」とTはいいました。Sは夫と相談の上 、喜んで家をもらうことにしました。

贈与契約とは、ただで財産を与える契約をいいます。私たちの日常生活でも贈与契約はよく行われま す。何気なく行われている贈与ですが、やはり契約の一種です。他の契約と大きく異なる点は、当事 者の親密な人間関係を背景として、恩恵的になされるところでしょう。その場ですぐに目的物を引き 渡してしまう場合(現実贈与)なら簡単でいいのですが、後で引き渡す場合には問題が起こることも あります。まず、書面にしていない贈与契約は履行が終わるまでは撤回することができます。また、 贈与者が死んだときに遺産を譲るとする「死因贈与契約」は、相続人と利害関係を生じます。 先は どの例のように、受贈者が何らかの負担を負う「負担つき贈与契約」では、受贈者が負担を実行しな い場合にはトラブルとなります。特に、不動産のような財産的価値の高いものが贈与されるケースで は、公正証書のようにしっかりとした書面にしておく必要性は高いといえるでしょう。

公正証書作成の際に注意すること

書面化しておく必要性の高い、死因贈与契約と負担つき贈与契約について、以下の点に注意しておい てください。

①死因贈与契約の場合

死因贈与は遺贈(遺言による財産の譲渡)と似ていますが、法的な性質は異なります。遺言について は、公正証書遺言のところで詳しく解説しますが、方式が厳格に定められています。ただ、遺言をす る者の一方的な意思表示だけでできます。他方、死囚贈与契約は契約の一種なので、当事者問の合意 が必要です。死因贈与は、贈与者に相続人がいる場合には、後日トラブルとなる可能性もあります。 そのため、合意だけではなく、明確に書面にしておくべきです。不動産が対象となっているケースで は、仮登記をしておくと確実でしょう。

②負担つき贈与契約

本ケースでは、2匹の犬を飼育することが受贈者(贈与される人)の負担となっています。実際によ くあるケースとしては、贈与者(贈与する人)と同居して老後の面倒をみるという負担がつけられる 場合があります。負担つき贈与契約を結ぼうとする贈与者は、負担が実行されなかった場合に備えて 、契約内容を公正証書にしておくと安心です。その際、負担については、できるだけ詳細かつ具体的 に記載しておきましょう。負担の内容・どのようにして履行するのか・期間などです。もし、負担が 実行されないときには、どうなるかも記載しておくべきでしょう。本ケースでは、大の飼育がきちん となされない場合には、家の所有権がTに復帰し、Sは登記の移転、家屋の明渡しをしなければなら なくなるということです。