公正証書にしたときのメリットについて

強制執行できたり証拠になったりする

山田さんは、かなり古い一戸建てを所有しており、それを賃貸物件としていました。前の賃借人が引き払ってからというもの、なかなか借り手がつかなかったのですが、賃料を格安にしたところ、若夫婦の鈴木夫妻が入居を申し出てくれました。山田さんは賃貸借契約を結ぶことにしましたが、知人から「公正証書にしておくと何かと便利だよ」と言われていました。金銭消費貸借契約と同じように賃貸借契約でも、公正証書にしておくメリットはあるのでしょうか。

一般的には、次の3点が挙げられています。

①執行認諾約款をつけた公正証書(執行証書)だと、判決を経ないで強制執行をかけることができる。

②公証人が公証するため、高度の証明力が認められている。

③債務者に対してかなりのプレッシャーを与えるので、履行が確保されやすくなる。

代表的なメリットは、なんといっても①なのですが、執行証書にできるのは、金銭の支払いや代替物・有価証券の一定数量の給付を目的とする請求に限られます。例えば、金銭消費貸借契約、売買契約などです。もっとも、②と③のメリットについては、金銭の支払いを目的としない契約でもあてはまります。仮にトラブルが発生して、訴訟の場に持ち込まれたとしても、契約内容を記載した公正証書は、かなり有力な証拠となるでしょう。特に複雑な契約の場合には、トラブル防止のために公正証書を作成しておくことは有意義です。債務者としても、おいそれと債務不履行をするわけにはいきません。また、債務者があちらこちらから借金をしているケースでは、債権者は自分の権利内容を明確にするためにも公正証書を作成しておくとよいでしょう。賃貸借契約でも、公正証書を作成しておくと、契約の終了のときに賃貸家屋の明渡しなどの点で、無用のトラブルを避けることができます。なお、賃貸借契約の中でも、賃料の支払いなど金銭の支払いを目的とする債務については、執行証書にしておくと強制執行をすることができますから、この点でもメリットがあります。

金銭を目的としないケースでは

では、金銭消費貸借契約や売買契約以外の契約では、証明力が高い、あるいは債務者に対してプレッシャーを与えることができるなどのほかに、公正証書を作成しておくメリットはないのでしょうか。実は、公正証書は公の資格のある公証人が作成するものだけに、各種の法律によって、特別な効力が認められています。また、公正証書によって契約を結ばなければならないとされるものもあります。それらのケースについては、その内容を熟知しておくと便利ですから、ぜひ、頭の片隅に置いておいてください。主なものとしては、以下の例があります。

①遺言状のケース

資産家の父親を持つAは父親の遺言状を託されていました。しばらくして父親が死亡し、親族が集まることになりました。

このようなケースでは、遺言状を保管している者は、死亡を知った後に、それを家庭裁判所に提出して検認(家庭裁判所による遺言書の確認)をしてもらうのが原則です。なぜなら、遺言状が勝手に書き替えられたりしていないかを、確認することが必要だからです。しかし、公正証書遺言の場合には、同一物が公証役場に保存されているので、書き替えの心配はありませんから、検認を受ける必要もありません。

②競売手続のケース

BはCから頼まれてお金を貸しました。そして、それを担保するためにCの所有する不動産に担保権が設定されましたが、登記はしていませんでした。期限を過ぎてもCが借金を返さないので、BはCの不動産から満足を受けたいと思っています。

債務の担保には、よく抵当権などの担保権が不動産に設定されて、そのことが登記されます。そして、債務不履行があると、債権者は裁判所に申し立てて、不動産を競売にかけます。もっとも、担保権の設定契約が公正証書にされているとその謄本を裁判所に提出すれば、不動産競売の手続を開始することができます。なお、債務者に対して他にも抵当権をもつ債権者がいて、その債権者が競売を申し立てた場合に、公正証書があると競売手続で配当を要求することができます。

③事業用定期借地権のケース

土地を賃貸借する場合に、その目的が、もっぱら事業のために使用する建物を所有することであって、しかもその期間が 10年以上20年以下の場合には、「借地借家法」によって、事業用定期借地権として扱われます。事業用定期借地権として扱われると、契約の更新や建物買取請求権といった、借地人保護のための特別な規定が適用されなくなります。事業用定期借地権を設定する契約は、公正証書によってしなければなりません。

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