送達のやり方を知っておこう

送達とはどんなことか

強制執行は、国家権力の力によって、債務者の財産から債権の満足を得るための手続です。そのため、強制執行のルールを定めている「民事執行法」によって、慎重な手続がいろいろと規定されています。いざ強制執行となる段階であっても、もしかすると、債務者側にもっともな反論があるかも知れません。ただ、有効な反論があったとしても、強制執行の手続が開始されていることを債務者が知らなければ、手の打ちようがありません。そこで、債務名義の送達が手続上必要とされているのです。この送達という手続が確実に行われるために、送達ができるのは、一定の資格者に限定されています。判決や和解調書といった裁判所で作成された債務名義については、その裁判所の書記官が送達にたずさわります。これに対して、公正証書の場合は、公証人が送達にたずさわることになっています。ここでは公正証書が問題となっているので、強制執行を希望する債権者は、公証人に送達してもらうことになります。公正証書は、原本を公証人が保管しています。債権者には正本が交付されています。そして、送達は謄本が利用されることになっています。なお、判決の正本については、債権者から申立てをしなくても、裁判所から職権で送達されることになっています。しかし、公正証書では職権による送達はしてもらえないので、債権者から送達申請をしなければなりません。注意したいのは、送達といっても、複数の種類があるということです。原則としては、特別送達という方法によりますが、場合に応じて、異なる方法によって送達をすることになります。送達の種類について、みていきましょう。

特別送達について

公正証書の謄本を債務者に送達するための、原則的な方法です。郵便法で特別に規定されている輸送方法です。あくまでも「郵送」であって、公証人自らが債務者に届けるわけではありません。まず、債権者から送達の申請を受けた公証人は、必要書類を封筒に入れて、その表面に「特別送達」と記載します。さらに、「郵便送達報告書」という書面を、この封筒に貼付します。それから、公証人は郵便局に行き、送達を依頼することになるのです。送達が依頼されると、郵便局員がそれを債務者に届けます。債務者側がそれを受領すると、郵便送達報告書に押印します。押印された郵便送達報告書は、公証人に送付されることになります。この一連の手続によって、公正証書の謄本が債務者に宛てて送達された事実が、確実に証明されるわけです。債務者としては、有効な防御手段があれば、それを主張する機会が得られます。債権者としても、債務者が送達を受けたと確実にいえるので、安心して手続を進めることになります。なお、債務者本人がたとえ不在であっても、同居人が送達を受け取れば、債務者の支配領域内に到達したといえるので、手続きは踏まれたことになります。

書留郵便による送達について

執行証書に基づく強制執行を目指している山田さんは、執行文の付与を受け、さらに、公証人に対して送達の申立てをしました。準備はこれで大丈夫と思っていたところ、債務者が受領を拒否したという事実を知らされました。これでは、送達の手続をふんだことにはならないので、山田さんはどうすればよいのでしょうか。

強制執行の近づいている債務者は、あらゆる手段を使って、逃げることを考えます。送達が強制執行に至る手続であることを知っているか、何となくそのことを感じとっている債務者は、送達の受領を拒否することがよくあります。このような場合に、送達ができないというのでは、債権者に酷です。そこで、特別送達よりも、有効な手段が用意されています。それが、書留郵便を利用する方法です。書留郵便は、多くの方が利用した経験があるかと思います。この方法では、送達すべきを書類を書留郵便につけて、債務者に宛てて発送するのです。その効果として、発送がなされた時点で、送達があったものとみなされることになります。これなら、いくら債務者が受領を拒絶しても、送達の手続をふんだことになります。

執行官による送達について

以上に説明した二つの方法を以外に、執行官に対して申立てをして送達する方法があります。「民事執行法規則」の20条3項では、「債権者は、送達と同時に強制執行を実地することを求めるときその他必要があるときは、執行官に対し、前項の書類の送達の申立てをすることができる」と規定しています。公正証書の謄本の送達は、公証人によるのが原則であって、執行官による送達は例外となっています。「送達と同時に強制執行を実地する」とは、執行官が差押さえと同時に、公正証書の謄本を送達することを意味しています。実際には、動産に対して強制執行するケースに限定されています。差押さえと同時に送達することになるので、債務者にとっては、かなり厳しい手続と言えます。また、「その他必要があるとき」とは、債務者が不在とか、同居人が受領を拒否したといった事情があり、特別送達ができなかった場合を意味しています。この場合、公証人に「送達不能証明書」を発行してもらい、それを執行官に提出します。当然のことながら、執行官による送達は、執行官に対して行います。執行官は、裁判所内の執行官室で執務しています。

公示送達という方法もある

これまでは、債務者が居留守を使ったり、同居人が受領を拒否した場合を想定して説明をしてきました。しかし、夜逃げなどで債務者の所在がわからなくなってしまったというケースもよくあります。そのようなケースでは、これまでに説明した手段では、送達できません。そこで、「公示送達」が必要となります。裁判所に行ったことのある人なら、知っていると思いますが、裁判所の前にはガラスケースの掲示板があります。その掲示板に債務者に対していつでも送達書類を交付する旨を掲示します。公示送達とは、このようにして、所在不明か、海外に居て送達が著しく困難な債務者に対して、送達をする方法なのです。公示送達はやむを得ない最終手段なので、裁判所の許可が必要になります。まず、債務者の所在が不明であることを証明する書類などを添付して、裁判所に対して公示送達許可を申し立てます。公示送達の許可が下りると、裁判所の掲示板に公示されます。送達されるべき書類は執行官が保管しておいて、公示を見て出頭した債務者に、いつでも交付できるようにしておきます。もし、債務者が出頭しないままだと、掲示から2週間(海外に送達すべきケースなら6週間)経過すれば、債務者に送達されたことになります。公示送達は、実際に、裁判所の掲示が債務者の目に触れることはほとんどないのにもかかわらず、送達の効果を認めるものですから、裁判所の許可を必要とする例外的手段となっているわけです。

送達の際に注意すること

このように送達は、どちらかというと素人にはなじみの薄い手続ですが、以下のような点に注意しておいてください。

①送達場所の選択は慎重に

どこに送達をすれば確実に債務者に届けられるかを、慎重に考えます。送達先は、何も債務者の住所に限定されません。住所に準じた場所である居所や、経営者であれば営業所・事務所に送達することもできます。また、会社員であれば、勤務先に送達することもできます。

②申立てをする公証人

特別送達など、公証人に送達の申立てをする場合、特に管轄は決まっていません。しかし、執行文の付与は原本を保管している公証人に申請するのですから、やはり、同じ公証人に対して申し立てるのは効率的でしょう。

③送達不能の証明

公証人に特別送達を申し立てたが、送達不能であった場合には、執行官による送達が考えられます。その申し立てでは、送達不能を証明しなければならないので、公証人から「送達不能証明書」の交付を受けておきましょう。

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