売買契約公正証書

代金支払について不安がある場合に活用する

売買契約とは、目的物の所有権を移転する代わりに金銭を給付することを約束する契約です。目的物が個性的なものかどうかによって、特定物売買と不特定物売買に分けられます。店舗や工場増設のための不動産売買は特定物売買、大量に生産されている健康食品や自然化粧品の売買は不特定物売買になります。売買契約は、当事者間で合意が成立すればそれだけで成立する契約です。金銭消費貸借契約のように、目的物を交付しなくても成立します。また、契約書などの作成はあくまでも証拠を残すためにつくられます。

ただ、売買契約にあたって、相手方の信用などに多少不安が残る場合には、執行認諾約款のついた公正証書を作成しておいて、いざというときには強制執行に移ることができるようにしておくとよいでしょう。本ケースでの商品の売買のように、交換が可能な代替物(健康食品や自然化粧品)の給付、金銭支払を目的とする請求の場合には、公正証書にしておけば強制執行をかけることができます。しかし、この種の売買契約で公正証書を作成しておくケースはあまりみられません。一方、不動産の売買契約では、公正証書を作成しておいても、土地や建物の引渡し・登記移転の債務名義にはなりません。ただ、代金支払いが履行されない場合には、公正証書を債務名義として強制執行をかけることができます。いずれにしても、買主の代金支払いについて不安がある場合には、公正証書を作成しておくと有効といえるでしょう。

作成にあたって注意すること

売買契約について公正証書を作成する場合には、以下の点に注意しておいて下さい。

目的物を明記する

売買契約では、目的物が何かがはっきりしていなければなりません。物それ自体の個性にこだわらない不特定物売買では、「R社製の健康食品X500個、自然化粧品A300個」といったように特定します。特定物売買、例えば不動産売買では、不動産の表示登記欄に記載されている事項によって特定します。土地であればその所在・番地・地目(種類)・地積(面積)によって、建物であればその所在・家屋番号・種類・構造・床面積によって、特定することになります。 不特定物の場合はそれほどでもありませんが、不動産や中古物件(中古車や中古機械など)といった特定物については、目的物を明確に特定しておく必要があります。そのために、不動産については登記簿謄本、中古車については登録証を、あらかじめ用意しておきます。登記・登録制度のない特定物については、その物の持つ特徴的なことを示しておくとよいでしょう。例えば、中古のタンスなら「裏側に 3センチ程度の傷あり」といったように特定します。

手付について

少額の取引ではあまり行われませんが、高額の取引きでは、よく、買主から売主へと「手付」の受け渡しが行われます。特に、不動産取引では、手付が交付されるのが通常と言えます。手付が交付されると、一般的には、「解約手付」として取り扱われます。解約手付とは、相手方が履行を開始するまでに、売主からはその手付の倍額を返還し、買主からは手付を放棄して、契約を解約することができることを認める手付です。そのまま売買が履行されるときには、手付は代金の一部として充当されることになります。 手付が交付されたとしても、解約手付の意味をもつかどうかで争いになるケースもみられます。公正証書を作成する際には、手付の金額とその性質についても、記載しておくのが無難でしょう。なお、解約手付の意味も持たない場合でも、契約をしたこと自体を証明する「証約手付」の性質は持つことになります。

代金について

代金については、買主が支払うべき総額と支払い方法について明確に記載しておきます。公正証書にしておくような取引では、契約時に一度に代金を支払うケースはむしろまれです。頭金(手付)・分割払いの方法・一回当たりの支払い金額、売主が取り立てるのか、買主が持参するのか、それとも銀行振り込みなのか、手形や小切手で決済するのか、といったことを正確に記載しておくことが後日のトラブル防止につながります。 代金支払と関連して注意しておくのは、目的物の引渡しの件です。代金の全額支払と引き換えに目的物を引き渡すのか、最初なのか、途中で引き渡すのかといったことも明記しておきます。特に不動産売買の場合には、所有権移転登記手続がありますし、物件の明渡しもあります。所有権移転登記は、実際には、登記手続に必要な書類の引渡しによって行われます。その時期については、明確にしておくべきです。

危険負担について

、Rが新店舗を購入するための売買契約を、不動産会社sと締結したとします。ところが、契約をまだ代金を支払っていない段階で、その建物が落雷によって焼失してしまったとします。この場合、Rは代金を支払う必要がなくなるのでしょうか。このように、売買の目的物が当事者の責任によらないで消滅してしまった場合に、その対価である売買代金がどうなるのかという問題を、「危険負担」といいます。民法で規定している原則によると、この場合、買主は代金を支払わなければなりません。しかし、何の責任もないのに建物が消滅してしまい、しかも、代金は支払わなければならないというのでは、買主にとって酷です。一般の常識にも反するでしょう。そこで、公正証書に、そのような場合には、代金を支払う義務は消滅すると、明確に記載しておくことが必要です。

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