金銭消費貸借の公正証書

金銭の授受や返還約束など要件をしっかり押さえておく

ここでは、通常のお金の貸し借りをした金の公正証書、法律的にいえば「金銭消費貸借契約」(借主が貸主から受け取った金銭と同額の金銭を返還する契約)を締結したときの公正証書の作成の仕方を説明することにします。お金の貸し借りは、金額の大小はともかく、たいていの人が経験することです。後日になってトラブルにならないように、公正証書を作成して、契約の中身をはっきりさせておくようにしましょう。

事前に用意しておくもの

公証役場に行く前に、以下のものを用意しておきましょう二度手間にならないように事前にきちんとチェックする必要があります。

自分を証明する書類

公正証書の作成を公証人に嘱託(依頼)する時点で、嘱託人が当事者本人であることを明らかにしなければなりません。公証人は必ず嘱託人の同一性を確認します。印鑑証明書・運転免許証などを用意します。外国人の場合には、外国人登録証・パスポートを用意します。

資格証明書または商業登記簿謄本

会社などの法人では、その法人の代表者が契約を締結する権限を持っています。公正証書の作成を嘱託する場合にも、代表権のあるものが嘱託をしなければなりません。嘱託をしている者が、本当に代表する権限を持っているかどうかを証明する書類も必要になります。法務局(登記所)に行って、資格証明書または商業登記簿謄本をとっておきましょう。

委任状と印鑑証明書

嘱託をしたい当事者本人が多忙な場合には、代理人によっても公正証書の嘱託はできます。この場合、公証人は、代理人と称する者が、本当に本人から委任を受けた者かどうかを確認しなければなりません。そのため、本人から委任を受けたという事実と委任の内容が真実かどうかということを証明する書類が必要になるのです。代理人は、本人の作成した委任状と委任者(本人)の印鑑証明書を持参しなければなりません。

印鑑

嘱託にしたがって公正証書が作成されると、当事者双方がその原本に記名・押印します。代理人によって嘱託する場合には、代理人が記名・押印することになります。印鑑(実印、法人の場合には代表印)も忘れずに持参しましょう。

収入印紙

契約書を作成した時には、そこに収入印紙を添付することが、「印紙税法」によって義務付けられています。「金銭消費貸借契約書」を公正証書にする場合であっても、収入印紙を添付することになります。収入印紙の金額は、債務額に応じて決まります。

作成費用

公正証書の作成には費用がかかります。この金額も、収入印紙と同様に、債務額によって決定されます。事前に調べて、忘れずに用意して置いて下さい。

委任状を作成する

職業上どうしても公証役場の開いている時間帯に、仕事を抜けられない人もいます。代わりに代理人に公証役場に行ってもらう場合には、委任状を作成して、代理人に持たせます。必要な事項などの記載もれや不備があると、代理人による嘱託が認められないことになり、代理人が出直しを余儀なくさせられます。以下の事項に十分に注意したうえ、委任状を作成してください。

本人の委任があることを確実に示すこと

金銭消費貸借契約では、債権者が債権の回収を確実にするために、債務者に対して、債権者側の使用人などを代理人とする委任状の作成を依頼する場面がよく見られます。この場合には、後日、委任の事実について紛争にならないように、本人から委任があったことを確実に示す必要があります。 委任状については、本人に自筆で作成してもらうことが最良の方法です。最近では、パソコンやワープロの普及によって、印字された委任状が一般的になりつつありますが、自筆の場合だと、本人が作成したことが証明しやすくなるのです。

委任の内容をできるだけ詳細に記載すること

委任の内容があまりに漠然としていると、公証人も嘱託を受けつけてくれません。また、代理人が権限外のことをするのを避けるために、できるだけ委任の内容を詳細に記載しましょう。 委任の内容については、委任状自体に記載するという方法もありますが、委任状には「委任事項は別紙記載内容の公正証書の作成」と記載しておいて、資料を添付するという方法もあります。その場合、添付資料の差し替えを防ぐために、委任状本体をホチキスでとじて、とじ目に割印(二つの文書にまたがって押印すること)をしておきます。

公正証書作成時に気をつけること

お金の貸し借り(金銭消費貸借契約)には、以下のような特徴があるので、これらの点には十分に留意しつつ、公正証書を作成してください。

契約が成立する要件について

消費貸借契約は、債務者(借主)が債権者(貸主)から交付された物を消費し、これと同種・同等・同量の物を返還する契約です。契約が成立するためには、a借主が貸主から受け取った物と同種・同等・同量の物を返還するという内容の当事者の合意と、b目的物を実際に交付することが必要とされています。金銭消費貸借契約の場合、目的物は金銭です。金銭が当事者間で交付されなければ契約は成立しないのが原則です。

もっとも、合意が成立したとしても、契約書や公正証書を作成する前に金銭を交付することは、実際のところほとんどありません。証拠を残さないまま、金銭を交付してしまうことは危険だからです。そこで、判例は、金銭を交付していなくても、当事者間の合意だけで金銭消費貸借契約が成立することを認めています。ただ、契約の成立や債務者の責任などが公正証書で明確にされたのに、いつまでも金銭が交付されないと、トラブルの元になりかねません。ですから、公正証書が完成したらできる限り早く、債務者に対して金銭を交付すべきでしょう。

利息について

お金の貸し借りには、通常、利息が付けられます。当事者間で利息を付けることが合意されていたら、必ず、公正証書にそのことを記載しておくようにしましょう。利息についての合意がないと、原則として、利息がつけられることはありません。もっとも、契約の当事者が商人(会社など)であるときには、特別に合意していなくても、利息(年6%)がつきます。 利息を付ける合意があるときには、その利率も公正証書に記載しておくようにします。もし、利率についての合意がない場合には、年5%となります。利率について注意しておくべきことは、利息制限法で規定している制限を守ることです。この制限に違反する部分については、無効となってしまいます。公証人も、公正証書への記載を拒絶することになるでしょう。制限は、元本に応じて次のようになります。

●元本が10万円未満の場合:年20%
●元本が10万円以上100万円未満の場合:年18%
●元本が100万円以上の場合:年15%

遅延損害金について

借金が必ず期限通りに返済されるとは限りません。そのような場合に備えて、利息とは別に賠償金として遅延損害金を定めておくのが通常です。遅延損害金は、元本に対して一定の率を掛け合わせた金銭を、遅延した期間に応じて支払うというものです。遅延損害金についても、利息と同様に利率で表現しますが、これに関しても利息制限法による制限があります。※で定めた利率の1.46倍が制限となります。

期限の利益喪失約款について

借金は分割で返済されることが、むしろ通常といえるでしょう。ただ、何回目かの支払いで債務者が支払いを怠るケースもあります。債務者が支払いを怠ると、期限を与えていた債権者の債務者に対する信頼が、裏切られたかたちになります。その場合に備えて、公正証書に期限の利益喪失約款を記載しておくとよいでしょう。期限の利益とは、返済期限がくるまでは返済しなくてもよいという債務者の利益のことです。期限の利益喪失約款は、一回でも債務者が支払いを怠ると、債権者は残額すべてをすぐに請求することができるようになるという約束です。

スポンサーリンク