代理人に頼んで作ってもらう場合

代理人によっても嘱託できる

公正証書は、ある当事者の法律関係を文書によって甲に証明するものです。そのため、内容の確実を期するには、当事者双方が直接に公証役場に出頭して、嘱託をし、公正証書にすべき内容を公証人に伝えるのが最良です。しかし、それぞれのスケジュールの都合から、当事者双方がそろって公証役場に出頭できないこともあるでしょう。特に会社員などは、平日の日中は、どうしても公証役場に行く時間を取れないのが現状です。

また、法律には疎いため自分で嘱託するのは少し自信がない、という人も決して少なくありません。そのため、公正証書の作成を公証人に嘱託(依頼)することは、代理人によって行うことも認められています。公正証書の作成を嘱託(依頼)することは、単に、私人間で契約を締結する行為とは、その性質が異なります。

執行認諾約款(債務の不履行があった場合に、直ちに強制執行に服するという約束)などは、むしろ訴訟で行う行為(訴訟行為)と同様の性質を持っています。しかし、当事者の便宜に配慮して、公証人法では、特に代理人の資格を限定していません。友人・知人または家族など、だれが都合の良い人に代理を依頼してよいわけです。もちろん、法律知識を持つ私どものような行政書士などの法律文書作成の専門家に依頼するのもよいでしょう。

委任状が必要になる

特に何の資格も要求せずに、代理人による嘱託が認められていますが、その半面、公証役場に出頭したものが本当に代理権を与えられているのか確認が必要となります。だれでも代理人となることができる以上、代理人を偽るものがあらわれる危険性が生じるからです。また、確かに委任は受けていても、その範囲を逸脱した内容の公正証書の作成を嘱託する恐れもあります。そこで、公証人法では、代理人が公正証書の作成を嘱託する場合には、代理人の権限を称すべき証書(委任状)を公証人に提出することを要求しています。

印鑑証明書の添付

本当に委任を受けていることを証明するためには、依頼した本人の発行する委任状を示さなければなりません。その委任状自体が本人の作成したものであることを証明するために、さらに、官公署(役場)の作成した印鑑または証明に関する証明書を添付することになっています。一般には、印鑑証明書が使用されています。ただ、外国人(特に欧米人など)は、印鑑よりも署名(サイン)の証明をしてもらいます。

もっとも、例外的に、印鑑証明書が不要な場合もあります。嘱託を受ける公証人にとって、その人物が委任を受けていることが明らかな場合には、手間を省くために印鑑証明書の添付が不要とされています。つまり、その公証人が保存していた書類により委任状が神聖であることが明らかな場合には、改めて印鑑証明書を提出する必要はないのです。なお、一度に、代理人が2件以上の公正証書の作成を嘱託する場合には、印鑑証明書は1通だけで構いません。1通でも、委任状が本人によって作成されたことが明らかになるからです。

白紙委任状の禁止

かつて悪質な金融業者が、債務者の窮状や法律の不知に乗じて、公正証書作成の嘱託に関する白紙委任状(一部の事項が記載されてない委任状)を取得することが社会問題化しました。そのため、貸し金業規制法によって、委任内容に何の制限もない白紙委任状の取得は禁じられるようになりました。違反者には罰則も科されます。たとえ、貸し金業以外の者に委任する場合であっても、白紙委任状は交付すべきではありません。

委任内容の記載

白紙委任状は法律的に明らかに問題となりますが、白紙とまでは行かなくても、委任の内容がはっきりしていないと、やはり、あとあと問題が生じることがあります。例えば、本人の所有する建物が対象とされている案件で、委任状に「不動産」などと記載されていると、その建物の立っている土地までが対象とされてしまう危険性があります。また、単に、契約の公正証書化だけが目的なのに執行認諾約款(債務を不履行した場合に、直ちに強制執行に服するという約束)について定めるのかどうかを明確に記載しておかないと、約款までつけられた公正証書が作成される恐れすらあります。このような後日のトラブルを回避するため、委任状に記載する委任の内容については、できるだけ明確かつ詳細に記載することが必要不可欠です。内容的に不明確な点があると、公証人が嘱託を受けないこともあります。ですから、トラブルの発生を未然に防止するため、公証人に提出する前に、委任の内容には十分気をつけて記載をしておくべきでしょう。

本人への通知

代理人の委任状については、偽造・変造・流用といった問題が発生しやすいといえます。そのため、委任状に印鑑証明書を添付して提出することが義務付けられていますが、さらに念のため、事後的に本人への通知が行われています。具体的には、以下のような事項について、公正証書作成後三日以内に本人に対して通知することになっています。もし、数日が経過しても何の通知もない場合には、公証役場に問い合わせをしてみましょう。 ※証書の件名、番号と証書作成の年月日 ※公証人の氏名と役場 ※代理人と相手方の住所・氏名 ※債務者がすぐに強制執行に服する旨の陳述(執行認諾約款)の記載の有無

委任状作成時の注意点とは

代理による嘱託をする場合には、委任の内容を明確にしておく必要があります。せっかく、法律関係をはっきりさせるために公正証書の作成を公証人に依頼したのに、それが新たな紛争の火種になるのでは、それこそ本末転倒の結果となってしまいます。代理人によって公正証書作成の嘱託をする場合の委任状については、典型例の書式をここで示しておきます。ただ、次の各点については、注意しておいて下さい。

執行認諾約款についての記載

執行認諾約款は債務者にとってかなり厳しいものです。そのため、債務者が代理人に嘱託の代理を委任する場合には、必ず、執行認諾約款について記載するのかどうかを明確にしておくべきです。

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