どこへ行けば公正証書を作ってもらえるのか

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公証役場へ行って嘱託する

公正証書は、私人が勝手に作成することはできません。資格を持った公証人に嘱託(依頼 )して作成してもらうことになります。では、公証人にはどこへ行けば会えるのでしょうか。公証人は、公証役場で職務を行っています。公証役場は、法務大臣の指定した地に設けられた公の機関です。役場というと、一般に思い出されるのが、市区町村役場でしょう。住民票の写しや戸籍謄本を取りに行くことが多いため、だれにでもなじみのある役所と言えます。最小の行政単位である市区町村にそれぞれ設置されています。公証役場の場合は、役場と銘打ってはいますが、各最小の行政区画ごとに必ずあるわけではありません。都市部にはかなり集中して設置されていますが、地方ではまばらにしかありません。特に、東京の23区内では、多くの公証役場が設置されていて、非常に便利です。これは、利用者、利用頻度が高いことによります。逆に、地方では、最寄に公証役場が設置されていないため、不便な結果となっていることは否めません。 実際に、自分の住所または仕事場から、どこの公証役場が近いかを調べるには、インターネットを利用するのが最も便利で早いといえます。公証役場は各地方の法務局に属しているので、それぞれのホームページなどから調べることができます。利用すべき公証役場のわかり、実際に訪れてみると、そこで勤務している公証人の氏名が表札として掲げられています。

公証人とはどんな人物か

それぞれの公証役場には、表札によって、そこに所属している公証人の氏名が表示されています。では、公正証書を作成してくれる公証人とは、具体的にどのような人なのでしょうか。もともと、これまで公正証書とは縁のなかった人が多いと思います。世間一般でも、日常生活や仕事で公正証書を作成するような人は、限られています。公証人と聞いても、なかなかピンとこないのも無理もありません。公証人はだれでもなれるわけではありません。身分としては、広い意味での国家公務員になります。30年以上の実務経験を持つ法律家の中から法務大臣が任命します。それでは、実際にどのようにして、公証人になるのでしょうか。公証人については、公証人法という法律で規定されています。それによると、公証人は成年者である日本国民で、試験に合格したのち、6か月以上公証人見習いとして実地修習を経た者がなれるものとされています。ただし、裁判官 (簡易裁判所判事を除く)、検察官 (副検事を除く)、弁護士の資格を持つもののほか、長い実務経験をもち、裁判官、検察官、弁護士と同等の知識をもつ者として公証人にふさわしいと認められたものは、試験や実地修習を経ることなく、公証人になることができます。 実際のところ、試験によって選ばれるより、公証人審査会の選考によって公証人になるケースがほとんどです。しかも、弁護士から公証人になることもあまりないので、裁判官や検察官を退官した人が任命されている場合がほとんどです。公証役場に行ってみるとわかりますが、公証人の多くは年配の方です。年配者が多いとはいっても、いつまでも公証人でいられるわけではありません。公証人法では、一応、70歳に達した公証人は、法務大臣が罷免することができるとしています。実際に、70歳に達すると公証人は辞任しているので、運用上は、定年制に近いものとなっています。公証人の仕事には、高度な法律の知識と豊かな実務上の経験が必要とされます。法律の世界で、長年様々な経験を積んできた人たちが、公証人として公正証書を作成しているのです。

公証役場に行く

公証人が仕事をしている場所(事務所)を公証役場といいます。役場というと少し古めかしいイメージを受けますが、だれもが利用することができる機関です。公証役場については、公証人法を受けて規定された公証人法施行規則に詳細に定められています。関連する事項についてみていきましょう。

執務時間

公正証書の作成を公証人に嘱託(依頼)する場合は、実際に交渉役場に出向くわけですが、受付時間はどのようになっているのでしょうか。コンビニのように24時間オープンならありがたいのですが、なかなかそうはいきません。公証人法を施行規則によると、公証人の執務時間は法務省職員の勤務時間に準じています。通常の役所の開いている時間 (午前9時から午後5時まで)を、イメージしていただければよいでしょう。ただ、話しを聞いたり、公証人の準備もあるので、午前9時過ぎから午後4時過ぎを目安に出かけるのが無難です。終了時間ぎりぎりに駆け込むことは、避けるべきです。公証人法施行規則では、一応、休日や勤務時間外でも、公証人は嘱託に応じなければならないとされています。ただ、実際のところ、よほどの例外でなければ、嘱託に応じてもらうことはできないので、気をつけてください。

書記

法律に関する事務は、書類の整理など面倒なことも多くあります。なかなか公証人だけで処理できるものではありません。裁判所に書記官がいたり、法律事務所に事務員がいるように、公証役場にも、公証人の執務を補助する書記が置かれています。書記は、民間企業の使用人と同様に、公証人との間で締結される雇用契約によって雇われます。つまり、公務員ではありません。これを聞くと、公正証書の作成を嘱託するときには、プライバシーに関することを話すので不安になるかもしれません。しかし、書記にも職務上知ることができた秘密を漏らさないようにする義務(守秘義務)が課せられているので、心配が要りません。

管轄とは何か

訴えは、管轄の裁判所に提起する必要があります。これと同じように、公証人にも管轄があります。この場合の管轄とは、公証人が公証人として執務を行うことができる土地的な範囲を意味しています。具体的には、公証人の職務執行の区域は、その所属する法務局または地方法務局の管轄区域と同じになります。公証人が管轄区域外で執務を行うことは、原則として、許されていません。もし、管轄外で公正証書を作成しても、その公正証書は無効になります。ただ、嘱託をする側にとっては、管轄区域はありません。例えば、東京都内に住む人が、千葉の公証人に嘱託をすることは一向に構いません。逆に、千葉の公証人に東京に出張してもらって、公正証書を作成してもらうことはできないのです。

除籍とは何か

訴訟で、もし、裁判官が当事者の一方の家族だったり、事件に利害関係をもっていたりすると、公正な裁判は望めません。そのような場合、裁判官は当然にその事件の担当からはずされます。この制度を除籍といいます。公証という仕事も公正が要求されるので、公証人にもこの除籍の制度が適用されます。もし、除籍されるべき公証人が公正証書を作成しても、無効になります。具体的には、次の四つの場合に、公証人は除籍されます。

公証人が嘱託人、その代理人または嘱託事項につき、利害関係をもつ者の配偶者、4親等内の親族または同居の親族であるとき、またはあったとき。

公証人が嘱託人、その代理人の法定代理人、保佐人(精神上の障害によって判断能力が著しく不十分な者「被保佐人」の保護者)または補助人(精神上の障害によって判断能力が不十分なもの「被補助人」の保護者)であるとき。

公証人が嘱託事項につき利害関係をもつとき。 公証人が嘱託事項につき代理人または補佐人(当事者や法定代理人、訴訟代理人とともに期日に主張し、弁論を補助する者)であるとき、また、過去に代理人または補佐人であったとき。