遺産分割協議書を作る①全員で署名押印する

法定相続分はあくまでも目安

法では、分割協議は「遺産に属する物や権利の種類と性質、または各相続人の年齢・職業などの一切の事情を考慮するよう」定めています。遺言がなく、相続人が複数いる場合、相続財産は、共同相続人全員の法定相続分に応じて、共有されます。ですが、これでは、相続人が相続財産を自由に使用したり、処分したりすることはできません。自由に使用し処分するためには、相続財産を具体的に分割し、各相続人の財産にしなければなりません。

つまり、相続人の間で協議して分割するのです。例えば、商売をしている人に相続が発生した場合、被相続人と一緒に商売をしていた長男と、サラリーマンをしている次男が、法定相続分が2分の1だからといって、事業用地や商品などを均等に分けるというのは、現実を無視した分配です。常識的には、事業用地や商品などは長男が相続し、他の金融資産を次男が相続する形の分割が望ましいでしょう。民法では、こうした具体的事情を考慮して遺産分割協議をすべきである、と規定しています。

分割協議の成立条件

遺産分割協議は、相続人のうち1人でも反対すれば成立しません。協議成立には全員の一致が必要です。また一部の相続人を除外してなされた遺産分割は、無効です。ですから、特定の相続人が、遺産の相当部分を秘匿するなど、他の相続人の意思に重要な錯誤を与える行為は、分割協議の取り消しの原因になります。遺産分割協議が行われ、協議が成立すると、相続人は遺産分割協議書を作成し、相続人全員(包括受遺者〈遺贈を受けた者〉や特別代理人がいればその者も含まれます)が、これに署名押印します。

印鑑は、三文判でも有効ですが、本人確認をするときのことを考えると、実印の方が望ましいでしょう。印鑑証明書を全員分そろえ、必ず、添付しておくことが必要です。このようにして行われた遺産分割は、相続開始時にさかのばり効力を生じます。被相続人の死亡時に直接相続したとして取り扱われるのです。なお、遺産分割をいつまでにしなければならないという期限は設けられていません。いつでも自由に行えます。ですが、相続税の申告期限が「相続開始後10ヵ月以内」となっているため、少なくともそれまでに分割協議をまとめるようにしたいものです。

遺産分割協議書の作成手順

遺産分割協議書の様式は自由です。ワープロによる作成でも手書きでも、縦書きでも横書きでもかまいません。ただし、気をつけたいのは、この書類は、不動産の相続登記手続きの際に「登記原因証明情報」(相続証明書)として必要になるほか、預金などの名義変更の際には提示を求められ、かつ相続税の申告書の添付書類にもなるということです。必要な記載事項は次のとおりです。

①被相続人を特定する(被相続人の氏名のほか、本籍、最後の住所、生年月日、死亡年月日の確認)
②相続人を特定する(相続人全員の氏名のほか、各人の戸籍、住所、生年月日、被相続人との続柄の確認)
③不動産の表示は、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)の記載のとおりとする(所在、地番、地目、地積、家屋番号、構造、床面積を記載する)
④株式、公社債、預貯金等についても、銘柄、株数、金額、金融機関名のほか、証券番号、口座番号を記載する
⑤各相続人は、氏名を自署し、実印で押印する(分割協議書が複数にわたるときは、各人が契印をする)
※財産をまったく取得しなかった相続人(事実上の相続放棄をした者)がいる場合でも、その者は分割協議書に署名押印する。
⑥分割協議書は共同相続人の人数分を作成し、各人の印鑑証明書を添付し、それぞれが保有する

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