交通事故による後遺障害逸失利益の計算方法

交通事故による後遺障害逸失利益の計算方法

後遺障害により労働能力が低下したと認められれば、働けなくなったことによる減収分を、逸失利益として請求することができます。

後遺障害逸失利益の計算式

年収×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数=後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益の計算例1

年収500万円、35歳のサラリーマンが、交通事故により後遺障害が残り、第9級10号に認定された場合
労働能力喪失率は35%(下の表参照)
35歳に対応するライプニッツ係数は、15.803(下の表参照)

500万円×0.35×15.803=2,765万5250円

上の例だと2,765万5250円が逸失利益になりますが、9級の自賠責保険金額は逸失利益と慰謝料を合わせても上限616万円ですから、残りについては加害者の任意保険もしくは加害者の自己負担となります。

後遺障害逸失利益の計算例2

年収300万円、25歳のOLが、交通事故により後遺障害が残り、第12級15号に認定された場合
労働能力喪失率は14%(下の表参照)
35歳に対応するライプニッツ係数は、17.423(下の表参照)

300万円×0.14×17.423=731万7660円

上の例だと731万7660円が逸失利益になりますが、12級の自賠責保険金額は逸失利益と慰謝料を合わせても上限224万円ですから、残りについては加害者の任意保険もしくは加害者の自己負担となります。

後遺障害逸失利益の計算例3

年収800万円、55歳の公務員が、交通事故により後遺障害が残り、第6級5号に認定された場合
労働能力喪失率は67%(下の表参照)
55歳に対応するライプニッツ係数は、9.394(下の表参照)

800万円×0.67×9.394=5,035万1840円

上の例だと5,035万1840円が逸失利益になりますが、6級の自賠責保険金額は逸失利益と慰謝料を合わせても上限1,296万円ですから、残りについては加害者の任意保険もしくは加害者の自己負担となります。

労働能力喪失率について

労働能力喪失率の認定には、旧労働省労働基準監督局の通牒による労働能力喪失率が基準として使われています。これを参考にして被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度、事故前後の稼働状況、生活状況などを総合的に判断して決められます。自賠責保険では、右の表の保険金額がそれぞれの等級の上限となります。後遺障害の保険金は、逸失利益と慰謝料の合計額で算出され、傷害に対する保険金の上限120万円とは別枠で支払われます。ただし、自賠責保険の性格上、これらはあくまで最低限の補償ですから、被害者は自分で適正な賠償額を計算しなければなりません。

「差額説」と「労働能力喪失説」

逸失利益の考え方は「差額説」と「労働能力喪失説」の2つの学説があります。差額説は事故前と事故後の収入の差を逸失利益と見なし、現実の減収がなければ逸失利益は認められないとする立場です。労働能力喪失説は収入の差額ではなく、後遺障害により労働能力の喪失・低下自体を損害と認める考え方です。裁判では差額説が基本的に採用されていると言われていますが、被害者の個別の事情によっては慰謝料に上乗せして調整されることもあります。

自賠責保険基準による後遺障害逸失利益の計算方法

逸失利益を算定する上で大事なのは、事故にあう前に実際にどれくらいの収入があったのか、具体的な収入額を被害者自身が証明することです。自賠責保険の支払基準では、厚生労働省作成の賃金センサスの全年齢平均給与額表が基準となり、以下の算定方法が取られています。

有職者の後遺障害逸失利益

事故前1年間の収入額と、後遺障害確定時の年齢に対応する年齢別平均給与額の年相当額の、いずれか高い額を収入額とする。ただし、次の者については、それぞれに掲げる額を収入額とする

①事故前1年間の収入額を立証することができる35歳未満の者
事故前1年間の収入額、全年齢平均給与額の年相当額および年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額

②事故前1年間の収入額を立証することができない者
35歳未満…全年齢平均給与額の年相当額もしくは年齢別平均給与額の年相当額の高い方
35歳以上…年齢別平均給与額の年相当額

幼児・学生・主婦の後遺障害逸失利益

全年齢平均給与額の年相当額とする。ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年相当額

その他働く意思と能力を有する者の後遺障害逸失利益

年齢別平均給与額の年相当額とする。ただし、全年齢平均給与額の年相当額が上限

職種による収入算出のポイント

自賠責保険の基準は、一応の年収算出の基準になりますが、その立証となるとサラリーマンと自営業では違ってきます。また、無職の者といっでも、それは主婦であったり、学生であったり、失業者であったりと色々ですから、年収を確定させるための基準が必要になります。

収入を確定させるための基準

1 サラリーマンなどの給与所得者

給与明細や源泉徴収票が基準となる。本給だけでなく、手当てや賞与も含まれる

2 自営業者・自由業者

納税証明書が基準となる。収入が納税証明書と異なる場合は、領収書や帳簿などで証明しなければならない

3 主婦

厚生労働省が毎年発表している賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金が基準となる。パートタイマーや内職をしている兼業主婦は、実収入と賃金センサスによる女子労働者全体の全年齢平均賃金額の、いすれか高い方が基準となる

4 幼児・未就労の学生、失業者

賃金センサスによる男女別全年齢平均賃金額が基準となる。18歳から67歳までが労働能力喪失期間として認められている

労働能力喪失期間

労働能力の喪失が認められる期間は、原則として18歳から67歳までとされており、症状固定と診断された日から67歳までの期間によって逸失利益が算定されます。ただし、障害の内容と部位、年齢などによっては、労働能力喪失期間を引き下げて対応されることかあります。例えば、むち打ち症と認定された場合は12級で3年から5年、14級の場合は2年ないし3年と短縮されて処理される傾向にあります。また、症状固定時から67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者は、症状固定年齢から平均余命までの2分の1の期間が原則として採用されます。

後遺障害等級別・自賠責保険金額
等級 自賠責保険
(共済)金額
労働能力喪失率
第1級 4000万円 100%
3000万円
第2級 3000万円 100%
2590万円
第3級 2219万円 100%
第4級 1889万円 92%
第5級 1574万円 79%
第6級 1296万円 67%
第7級 1051万円 56%
第8級 819万円 45%
第9級 616万円 35%
第10級 461万円 27%
第11級 331万円 20%
第12級 224万円 14%
第13級 139万円 9%
第14級 75万円 5%

年齢別就労可能年数およびライプニッツ係数
年齢 幼児・学生・働く意思と
能力を有する者
有職者
就労可能年数 ライプニッツ係数 就労可能年数 ライプニッツ係数
0才 49年 7.549 67年 19.239
1才 49年 7.927 66年 19.201
2才 49年 8.323 65年 19.161
3才 49年 8.739 64年 19.119
4才 49年 9.176 63年 19.075
5才 49年 9.635 62年 19.029
6才 49年 10.117 61年 18.980
7才 49年 10.623 60年 18.929
8才 49年 11.154 59年 18.876
9才 49年 11.712 58年 18.820
10才 49年 12.297 57年 18.761
11才 49年 12.912 56年 18.699
12才 49年 13.558 55年 18.633
13才 49年 14.236 54年 18.565
14才 49年 14.947 53年 18.493
15才 49年 15.695 52年 18.418
16才 49年 16.480 51年 18.339
17才 49年 17.304 50年 18.256

年齢 就労可能年数 ライプニッツ係数 年齢 就労可能年数 ライプニッツ係数
18才 49年 18.169 39才 28年 14.898
19才 48年 18.077 40才 27年 14.643
20才 47年 17.981 41才 26年 14.375
21才 46年 17.880 42才 25年 14.094
22才 45年 17.774 43才 24年 13.799
23才 44年 17.663 44才 23年 13.489
24才 43年 17.546 45才 22年 13.163
25才 42年 17.423 46才 21年 12.821
26才 41年 17.294 47才 20年 12.462
27才 40年 17.159 48才 19年 12.085
28才 39年 17.017 49才 18年 11.690
29才 38年 16.868 50才 17年 11.274
30才 37年 16.711 51才 16年 10.838
31才 36年 16.547 52才 15年 10.380
32才 35年 16.374 53才 14年 9.899
33才 34年 16.193 54才 13年 9.394
34才 33年 16.003 55才 13年 9.394
35才 32年 15.803 56才 12年 8.863
36才 31年 15.593 57才 12年 8.863
37才 30年 15.372 58才 11年 8.306
38才 29年 15.141 59才 11年 8.306

年齢 就労可能年数 ライプニッツ係数 年齢 就労可能年数 ライプニッツ係数
60才 11年 8.306 81才 4年 3.546
61才 10年 7.722 82才 4年 3.546
62才 10年 7.722 83才 3年 2.723
63才 9年 7.108 84才 3年 2.723
64才 9年 7.108 85才 3年 2.723
65才 9年 7.108 86才 3年 2.723
66才 8年 6.463 87才 3年 2.723
67才 8年 6.463 88才 3年 2.723
68才 8年 6.463 89才 2年 1.859
69才 7年 5.786 90才 2年 1.859
70才 7年 5.786 91才 2年 1.859
71才 7年 5.786 92才 2年 1.859
72才 6年 5.076 93才 2年 1.859
73才 6年 5.076 94才 2年 1.859
74才 6年 5.076 95才 2年 1.859
75才 5年 4.329 96才 2年 1.859
76才 5年 4.329 97才 2年 1.859
77才 5年 4.329 98才 2年 1.859
78才 5年 4.329 99才 2年 1.859
79才 4年 3.546 100~才 1年 0.952
80才 4年 3.546
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