損益相殺で減額されるものがある

損益相殺というものはどんなことをいうのか

事故で負傷した場合、自賠責保険から支払いを受け、かつ加害者に損害賠償の請求をして損害額の全部を賠償してもらった場合、被害者は自賠責保険からの支払分は得することになります。こうしたことがないよう損害賠償額の算定に当たっては、自賠責からの支払分は損害賠償額から控除します。このような場合の控除を損益相殺といいます。損益相殺について問題になったのは、幼児が死亡した場合の養育費の控除です。幼児が生きていれば、学費や小遣いなどがかかりますが、幼児が死亡すれば両親はその支出を免れます。これについては、最高裁判所が、幼児の逸失利益は幼児本人について生じたもので、養育費を免れるのは両親に生じたものであるから、損益相殺の対象にはならないと判決(昭和39年6月24日)しました。しかしその後も、これを疑問として訴訟が起こされたのですが、最高裁判所は幼児の逸失利益と養育費の利益とは性格が全く異なるもので、幼児の逸失利益の算定では、養育費を控除すべきではないと判決(昭和53年10月20日)し、解決が図られました。

損益相殺の控除の対象となるもの、ならないもの

控除の対象になるもの

①受領済の自動車損害賠償額、政府保証事業による填補金、②給付が確定した各種社会保険給付金(労災・健康保険・年金など)、③所得補償保険金。ただし、控除の制限があり、たとえば、自賠責保険からの給付は人身事故に対するものであるから物損から控除すべきではない、などの判例があります。

控除の対象とならないもの

①加害者からの香典・見舞金(額が大きい場合、損害賠償債務の一部弁済とされる場合がある)、②生命保険金・搭乗者傷害保険金(搭乗者傷害保険金については、受領を考慮して慰謝料で斟酌した判例がある)、③その他、Ⅰ生活保護の給付金、Ⅱ労働者災害補償保険法23条の労働福祉上の一環として支給される特別支給金など、Ⅲ未給付の社会保険給付金(労災・年金など)、Ⅳ雇用保険法による給付金、Ⅴ養育費、Ⅵ税金。なお、損益相殺については、過失相殺前の額から控除すべきとする説と過失相殺後の額から控除すべきとの説があります。労災給付については、過失相殺後に控除するとした最高裁判決(平成元年4月11日)があります。

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