不貞者からの請求が認められる場合もある

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離婚原因を作った側からの離婚請求は、原則として許されない

家族法の分野では、クリーンハンズの原則と言われるものがあります。自ら手を汚している者は、そ の手で裁判所へ救済を求めることは許されないというものです。自分から不貞という離婚原因を作っ ておきながら、離婚を求めようというのは、道徳的に見ても、倫理的な観点からも許さるべきもので はありません。最高裁判所は、「不貞をはたらいた夫からの離婚請求を認めたのでは、義は全く俗に 言う踏んだり蹴ったりであって、法はそのような不徳義・勝手気ままな請求を許すものではない」( 昭和27年2月19日判決)と厳しい判決を下しています。この判決は「踏んだり蹴ったり判決」といわれ 、それ以降、最近まで一貫した裁判所の姿勢でした。とはいうものの、別居期間が20年とか30年とい うように相当長く続き、夫婦としての共同生活の実態もなくなり、その回復の見込みが全くなく、実 際上、夫婦生活が破綻していても、なお戸籍上だけの婚姻を継続させることは、不自然であるという こともできます。

有責配偶者からの離婚請求が一定の条件の下で認められるようになった

回復する見込みのない婚姻状態を続けさせるより、新しく始めた家族や子供のことも考慮すべきでは ないか、いつまでも歪んだ状態にこだわるべきではない等の批判があり、各地の裁判所で有責配偶者 からの離婚請求を認めるケースが最近になり見られるようになりました。最高裁判所も、別居期間が 30年にも及ぶ夫婦について①長期の別居、②未成熟の子がいない、③相手方配偶者が酷な状態におか れない、という要件の下に、「有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすること はできない」との判決を出したのです(昭和62年9月2日)。この最高裁の判決以降、有責配偶者から の離婚請求を認める判例が相次いで出され、別居期間についても、22年、16年、10年、6年と短縮され ました。もちろん、別居期間の長さだけで離婚が認められるわけではなく、前に述べた条件を満たす ことが必要なことはいうまでもありません。なお、平成8年に公表された民法改正案要綱では、「夫婦 が5年以上継続して共同生活をしないとき」を離婚原因として設けることが提案されています。最高裁 の判例だけを調べてみても別居が「相当長期間」とはどれくらいの期間かについて、離婚を認めた例 は16年(昭和63年4月7日判決)、10年3か月(昭和63年12月8日判決)、8年弱(平成2年3月6日判決) 、長期ではないとして認めなかった例は8年(平成元年3月28日判決)、11年(平成2年3月6日判決)が あります。離婚を認めるかどうかは、別居期間の数量的なものだけで決められるわけではなく、時の 経過が諸事情に与える影響も考慮して判断される相対的なものといえます。なお、未成熟な子がいな いことも、認める条件ですが、17歳高校生は未成熟子、24歳大学生は未成熟子ではないとしています 。