離婚届に判を押した後に気が変った

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離婚する意思は離婚届けを提出する時点での意思である

たとえ夫婦の仲とはいっても、いってはならない言葉、我慢ならない言葉というものがあります。夫婦げんかの末、売り言葉に買い言葉、「よし、分かれてやろう」「私こそ、前から別れたいと思っていたのよ」ということで、頭に血がのぼったまま、山田さん夫婦は離婚する話しになってしまいました。離婚するには、結婚する以上に、冷静に考え、またエネルギーも必要とするものです。それなのに、激情に駆られ、あるいは気持ちが定まらないままに、離婚届にハンコを押すべきではありません。また、これまで述べてきたように、離婚をするには、子どもの問題、財産の問題など、いろいろ話し合って決めなければならないことが数多くあります。これらのことを何ら考慮せず、離婚を決めても、後で後悔するのは目に見えています。花子さんも、翌日離婚届を市役所からもらってきて、署名押印して夫の太郎さんに渡したのです。昨夜の頭に上った血が、冷めていなかったのです。しかし、その翌日になり、冷静さを取り戻した花子さんは、自分に本当に離婚する意思があるのかどうかわからなくなりました。離婚するにしろ、止めるにしろ、夫の太郎さんと冷静に話し合ってからだと思ったのです。

ハンコを押した後でも事前に離婚を阻止する方法がある

協議離婚は離婚届が提出され、受理されることによって成立するものです。一度は離婚しようと考えていたとしても、離婚届を提出する時点で離婚の意思がなくなっていれば、有効な離婚は成立しないのです。このようにいったんは離婚に同意したけれども、届をする前の段階で翻意したという人のための制度が、「離婚届の不受理申出」です。これは、離婚届に署名押印をしたが、その後、離婚の意思が変わったので、相手が離婚届を提出しても受理しないでほしいという書面を、届の出されるべき市区町村役場に出しておき、受理されるのをストップしてもらう方法です。ハンコを押した離婚届を相手に渡しているわけですから、急ぐケースが多いと思いますが、電話では受け付けてはくれません。必ず書面で申し出ます。離婚届の不受理申出書の用紙は、市区町村役場に備え付けてあります。もし、備え付けていないようでしたら、係の人に尋ねて書いてください。この不受理の申し出をしておきますと、その後に届けられた離婚届は戸籍記載前であれば、返してくれますし、係のミスで受け付けられ戸籍に記載されてしまった場合には、職権で離婚の事実を抹消してもらうことができます。この「離婚届の不受理申出書」を出して、受理されない期間は 6か月ですので、この期間が過ぎても離婚届を出される心配があれば、再び申出をしておくべきです。

夫にだまされて離婚届にハンコを押してしまった

例えば、夫から借金の請求を避けるために、方便として形式的に離婚届を出すだけだからと言われ、ハンコを押し、離婚届が受理されてしまうと、後でたとえ本心からの離婚ではなかったと主張しても、離婚は有効に成立するというのが判例です(最高裁・昭和57年3月16日判決)。しかし、夫が妻には債権者からの借金請求を免れるためだからと離婚届にハンコを押させて別居をし、1か月後に目的の別の女性との婚姻届を出したというケースでは、このような協議離婚は妻に対する詐欺であるとして、協議離婚の取消を認めています(長野地裁・昭和46年2月26日判決)。